死刑確定から40年間…奥西死刑囚の再審請求認められず 海外は司法制度の問題を指摘

2013年10月18日 20:00

印刷

記事提供元:NewSphere

 1961年に三重県名張市で農薬入りのぶどう酒を飲んだ17人が中毒症状を起こし、うち女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」の7回目の再審請求で、最高裁は16日、奥西勝死刑囚(87)の再審を認めない判決を下した。

 奥西死刑囚は事件当初、妻と愛人との三角関係を清算するため、ぶどう酒に農薬を入れたと自白し、殺人容疑で逮捕された。同死刑囚は後に、自白は強要されたものとして撤回。1964年の津地裁は証拠不足で無罪、1969年の名古屋高裁は逆転死刑、1972年に最高裁で死刑が確定した。昨年高熱を出し、名古屋拘置所から八王子医療刑務所へ移送された。

 今回弁護側は、毒物は別の農薬であるとの新しい証拠を提出し、自白の信用性が崩れたと主張。しかし最高裁は、当時の自白は有効としてこれを棄却した。

 国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは17日、「法を歪曲した茶番」だとこの判決を批判。「弁護士なしでの自白強要など、本事件の欠陥のある尋問過程は再審されるべき。彼の危険な健康状態を考慮すれば、より急務である」と語った。

【日本の司法制度の問題点】

 奥西死刑囚は死刑確定から40年以上たつ、世界でも最高齢の死刑囚の1人だ。弁護側は8回目の再審請求を申し立てる方針を明らかにしているが、このプロセスには数年を要する。つまり今回の最高裁の決定は、老齢か死刑執行により、同死刑囚が刑務所で死ぬことを意味する。

 日本の司法制度は自白に大きく依存しており、しばしば拷問や虐待を伴う。また、尋問の長さに明確な制限はなく、弁護士の同席は認められていない。さらに死刑囚は独房に収容され、執行のわずか数時間前に告知を受ける。

 日本には現在130人以上の死刑囚がおり、安倍首相が2012年に就任して以来、6人が死刑を執行されていると、アムネスティ・インターナショナルは指摘している。同団体は、例外なくすべてのケースにおける死刑に反対しており、日本政府に対し、まず死刑執行を一時停止するよう要請している。

 スペシャル・ブロードキャスティング・サービスは、先進民主国家で死刑を執行するのは米国と日本だけで、欧州政府や人権団体が繰り返し抗議していると報じた。

【世界最長の死刑囚】

 世界最長の死刑囚は、1968年に死刑が確定した袴田巌(77)だ。袴田氏は警察による20日間にわたる尋問後に自白、上司とその家族を惨殺したとして死刑判決を受けた。その後、自白を撤回したものの、今も独房で監禁され、精神的な病に苦しんでいる。

 3人の元裁判官の1人は、「彼は無罪と思う」と異例の告白をした。弁護士によると、最近の法医鑑定では、彼のDNAと犯人が着ていたとされる衣類サンプルが一致しないという。アムネスティ・インターナショナルはこのケースについても、再審されるべきと主張している。

■関連記事
インド、テロリストの死刑執行―海外紙は印パ関係に注目―
メディアが教えてくれない 5つの世界重要ニュース
「一票の格差」違憲判決 日本各紙の評価とは?

※この記事はNewSphereより提供を受けて配信しています。

関連記事