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「クルマとエレキの駆け比べ」で市場コンセンサスを下回るエレキ株にもキャッチアップを期待=浅妻昭治
<マーケットセンサー>
「ウサギ」と「カメ」の駆け比べは、子どもでも知っているイソップ寓話である。快足自慢のウサギが、余裕の余りに途中で一眠り、鈍足ながら着実に歩みを進めたカメにゴールに先着された逆転劇から、自信過剰、油断大敵を戒める教訓はお馴染みである。このウサギとカメを現在の株式相場に例えるなら、ウサギは「クルマ(自動車・輸送株)」、カメはエレキ(電機・精密株)」とするのに、そう異論は多くないだろう。
まず株価的に業種別の東証株価指数でみても、両セクターとも、今年5月の高値から6月安値まで約18%の下落をしているが、この安値からのリバウンド率は約2倍の格差がある。クルマ株では、波乱相場を乗り切って史上最高値を更新した富士重工業 <7270> などのサブライズ銘柄も飛び出した。
また実態面でも、折からの3月期決算会社の4~6月期(第1四半期、1Q)決算でも、クルマとエレキの業績推移には、やはり快足、鈍足の違いが如実に現れている。クルマでは上方修正銘柄のウエートが高いのに対して、エレキは上方修正銘柄は少数派で、エレキ株に含めるとブーイングが起こりそうだが、キヤノン <7751> のように下方修正する銘柄まで混在した。
それに株価的にも業績的にも、セクター全般を牽引するリーダー株の存在でも大きな開きがある。クルマでは、前週末2日に今3月期業績を上方修正したトヨタ自動車 <7203> が、米国市場で同社のADR(預託証券)が、大幅高したことから、いずれ遠からず年初来高値を更新すると想定され、クルマ全体への好波及はまず間違いのないところである。ここでも今期業績を上方修正した富士重が、補助エンジンの働きをすることは想像に難くない。
これに対してエレキは、パナソニック <6752> にしろ、ソニー <6758> にしろ、まだビジネスモデルの転換期・再建途上にあって1Q業績は、続伸・増益転換したにしろ、まだソフトとハードをひっくるめたワールドワイドの競争に勝ち残れる展望は開けていない。業績を上方修正した日本電産 <6594> やスマホ向けの高付加価値部品が好調な村田製作所 <6981> などでセクター全体をリ-ドできるかといえば、個別選別物色にとどまる可能性が捨てきれない。実際にエレキ株の1Q業績は、円安効果で回復したが、市場コンンセンサスを下回る銘柄が多数派で、期初予想を据え置いた3月通期業績も、市場コンセンサスに未達となっている。
とくにこの市場コンセンサスが、曲者である。例えばソニーは、1Q業績がV字回復して市場コンセンサスを上回って100円高したが、期初予想を据え置いた通期利益が市場予想に届かないことが響いて、急速に上げ幅を縮めてしまった。ソニーと同時に1Q決算の発表とともに今期業績を上方修正し、それでも通期業績が市場コンセンサスに未達となったスズキ <7269> が、ほぼ高値引けとなったのとは対照的な株価推移となった。
こうなると、エレキ(カメ)が、クルマ(ウサギ)を逆転し、ゴールに先着する(ハイリターン)ことなど、イソップ寓話のなかだけの夢物語ということになる。相手は、名だたるトヨタ自動車である。途中で一眠りすることなどまるで想定外である。しかしである。諦めるのはまだ早い。「逆もまた真」の逆転の発想をしてみることで、まるで百八十度異なる投資戦略が浮上することになる。市場コンセンサスを逆手に取るのである。
市場コンセンサスを下回ったことは、逆に現実の企業業績が、期の進行とともに市場コンセンサスとのかい離を修正する可能性を示唆していることでもあると見直すのである。実際に今年4~5月の3月期決算発表時にも、こうした市場コンセンサス未達銘柄を業績上方修正余地銘柄と位置づけ、この上位のクルマ株のトヨタや富士重などを買い上げたからである。この発想に立てば、歩みの遅いエレキ株も十分に投資対象銘柄に仲間入りすることになり、逆張りも一考余地があることになるわけだ。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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