【日経平均】5日、首相が成長戦略第3弾を披露すると518円安

2013年6月5日 20:13

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記事提供元:エコノミックニュース

 NYダウは76ドル安。午前は日欧の株高の流れを受けて高かったダウを急落させたのは、世界経済の下振れリスクを懸念した国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事の発言と、量的緩和縮小を支持するカンザスシティ連銀のジョージ総裁のスピーチ原稿の公表で、「二人の女」がNYダウの火曜日の連勝記録を20で止めた。5日朝方の為替レートはドル円100円前半、ユーロ円131円近辺で円安が少し進行していた。

 

 日経平均は32.99円高の13566.75円で始まるがTOPIXはマイナス。ドル円が円高方向に動くとそれに合わせて13405円まで下げてからプラスまで戻し、その後は方向性が定まらずプラスとマイナスの間を行ったり来たり。だがそれも地獄の1丁目1番地だった。後場開始と同時に東京のグランドプリンス新高輪で安倍首相が成長戦略第3弾を披露する講演を始めると、いったん13711円まで上がるが、「新鮮味がない」「期待外れ」など市場からシビアな評価が続出。ドル円は100円を割って円高が進行し、日経平均株価は下落、下落、少し休んでまた下落。後場だけで700円も下げ4月8日に乗せた「甘利ライン」の13000円割れまであと11円。終値は518.89円安の13014.87円で今年3番目の下げを喫した。TOPIXは-35.44の1090.03。売買高は43億株、売買代金は3兆2727億円だった。

 

 東証1部値上がり銘柄は340で約2割もあったが、業種別騰落率のプラスはJAL<9201>が後場も健闘し60円高だった空運1業種のみ。マイナス幅が小さかったのはサービス、鉱業、情報・通信、化学、卸売などで、大きかったのは電気・ガス、証券、その他金融、保険、不動産、電気機器などだった。

 

 この日も日経平均を左右したのはファーストリテイリング<9983>で、終値は値下がり率6位の3130円安で3月28日以来の株価3万円割れ。日経平均マイナス寄与度125円は下落幅の4分の1を占めた。5月の国内ユニクロ既存店売上高が10.9%増でも全く材料にならない。日経平均採用225種でプラスは、前夜のワールドカップ出場決定効果で80円高だった電通<4324>、業績好調のいすゞ<7202>、三越伊勢丹HD<3099>の3銘柄だけだった。その他の主なプラス銘柄は、牛丼の値下げで5月の既存店売上高が15%アップした吉野家HD<9861>、ネット選挙関連のドワンゴ<3715>、値上がり率3位に入った日本カーバイド工業<4064>、オリエンタルランド<4661>、DeNA<2432>などだった。

 

 この日の主役は「成長戦略第3弾」。目標は10年で1人当たり国民総所得(GNI)を150万円上乗せすること。2011年は45180ドル(451万円)だったので、33%増の601万円を目指す。平均年収がそれだけ上がれば個人消費は活発化するだろうか。農業は「農地集積バンク」「農地利用マップ」などの施策が示され、日本農薬<4997>や地図のゼンリン<9474>が一時急騰した。予想通りに市販薬のネット販売原則解禁が盛り込まれ、ケンコーコム<3325>は前場でストップ高比例配分。楽天<4755>は一時75円高の急騰をみせ、カカクコム<2371>も218円の大幅高になった。

 

 「3年間で民間投資70兆円」と並んでPFIを積極導入する社会資本整備が提唱され、集合住宅の容積率緩和の話も出た。東鉄工業<1835>、日本道路<1884>、日本橋梁<5912>、横河ブリッジHD<5911>、タクマ<6013>などインフラ整備関連銘柄が前場から先取り買いされ、クレーンのタダノ<6395>は66円高になったが、大引けにかけて売りに押された。なお、インフラ輸出も「2020年までに30兆円」という目標が示された。

 

 一方、原発再稼働のようなアメ話がなく、電力小売の全面自由化、発送電分離のようなムチばかり入ったので電力セクターは全面安になり、値下がり率ランキング10位以内にはストップ安で100円安の2位東京電力<9501>、5位四国電力<9507>、7位北海道電力<9509>、8位関西電力<9503>、9位東北電力<9506>と5銘柄も入った。「カジノ解禁」の話も最後まで出ず、前場は高かった関連銘柄は落胆売りされてオーイズミ<6428>が値下がり率1位、日本金銭機械<6418>が同10位になっていた。

 

 外国企業の対日直接投資を促す「国家戦略特区」構想は評価されたが、医療や教育や住宅の話はあっても法人税優遇の話はなし。公的年金の運用手法見直しへの言及もなく、「あれがない、これがない」と市場の失望を買ってしまった。成長戦略第3弾のキーワードは「民間活力の爆発」だが、ビッグバンを起こすどころかこの日の株価をブラックホールに陥れる結果に。安倍首相は講演で「成長のために必要ならば、どのような岩盤にも立ち向かっていく覚悟だ」と見得を切ったが、この戦略で「虚仮(こけ)の一念、岩をも通す」と愚直に突き進むお考えなのだろうか。(編集担当:寺尾淳)

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