米無人機による攻撃続くパキスタン、和平交渉は遠のくのか

2013年6月1日 18:00

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記事提供元:NewSphere

 イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」ナンバー2と言われていた、ワリウル・ラフマン氏が、米国の無人機攻撃を受けて、5月29日に死亡した。同氏の他、少なくとも5名が殺害された模様だ。

 パキスタンでは、5月11日に行われた選挙で勝利したナワズ・シャリフ元首相が、6月5日に首相に就任することとなっている。シャリフ氏はTTPとの争いの終結に積極的とされる。

 しかしTTPは、今回の事件について、パキスタン政府が米国の無人機攻撃を容認していると述べ、歩み寄りを見せていた双方の間に亀裂が入ってしまったようだ。

 海外各紙は、態度を硬化させるTTPや、原因を作った形の米国の様子を報じている。

【TTP、和平交渉を撤回し政府へ報復を宣言】

 シャリフ氏は、かねてから話し合いを「最善の方法」として、国内におけるテロリズム問題を解決していきたいと語ってきた。また、米国による無人機攻撃にも反対の姿勢を示していたとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。

 その姿勢を受け、TTPは今年に入ってから和平交渉を提案しており、その実現に向けて双方が準備を進めてきたという。

 しかし、シャリフ氏の当選で交渉が現実味を帯びてきたタイミングでの無人機攻撃により、TTPは「政府は米国と手を組み、我々の指導者を殺害した。そのような状態で和平交渉などあり得ない」と話し合いを撤回することを表明し、双方への報復を誓ったという。

 専門家は、交渉を実現させるためには、米国、パキスタン政府、そしてTTPが同じ土俵に立つ必要があると指摘している。またパキスタン国民からは、米国は意図的に政府と武装勢力の和平交渉を妨害している、と非難する声も強まっているようだ。

 なお殺害されたラフマン氏は、ハキームッラー・マフスード氏と共に、TTPのトップ権力争いにあったといわれる。2氏のうち、ラフマン氏は比較的穏健派として、政府との交渉の橋渡し役に適している人物だと評されていたようだ。希望の光でもあった同氏が殺害された影響は小さくないだろう。

【あくまで米兵の安全を優先させた結果だというが】

 ラフマン氏の殺害に関して、無人機攻撃の実施権限を持つ米中央情報局(CIA)はコメントを控えている。カーニー米大統領報道官も、自身は「確認する立場にない」と述べているとアルジャジーラ紙などは報じている。

 オバマ米大統領は先月、無人機の使用を規制する新たな方針を明らかにしたばかりだったが、未だなお、従来通りの攻撃を実施しているとアルジャジーラは指摘している。

 米政府は「TTPに対する無人機攻撃は、パキスタン国内の問題解決に向けた交渉を台無しにするほどの価値があるのか?」という質問に対して、「アフガンにいる米兵士を守る義務がある」と述べ、返答を濁しているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた。

 なおニューヨーク・タイムズ紙などによると、殺害されたラフマン氏は、2009年にCIA職員7人が死亡したアフガニスタン米軍基地への攻撃などの主犯だとして、米政府は500万ドル(約5億円)の懸賞金を懸けていたという。

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