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自動車各社、過去の円高が業界にどう影響を与えたのか
日本の輸出産業の最大事業者である自動車メーカーは、1970年の「円」変動相場制移行から今日までずっと、円高のたびに経営努力を強いられてきた。
今回の自民党・安部政権による“初めての円安”が、いまの自動車業界に与える影響とは? それを探るには、過去の円高が業界にどう影響を与えたのか振り返ってみると分かりやすい。
2002年に連結経常利益で1兆円を突破して過去最高益を記録したトヨタ。しかし、2008年のリーマンショック以降の対ドル75円に及ぶ円高がトヨタの経営を圧迫し、2009年決算報告で、あっさりと赤字に転落した。この経営赤字は4年続く。メディアは急激な円高で「前年から一転、トヨタが赤字に転落!」と報道、一般的にもそう見られている。
確かに1ドル100円が70円にまで円高が進むと誰もが驚く。例えば、米ドル100円時代に日本で300万円/米国で3万ドルだったプリウスが、「対ドル:70円まで円高になったので4.29万ドルになりました」とはアメリカの販売現場とて言えない。
プリウスは日本国内で製造している。そのクルマを北米ほか世界に輸出している。そんなわけで、「円高は困る」代表車種なわけだ。
しかしながら、プリウスを全部バラバラに分解してみると、意外にも国産部品が少ないことに気付く。国内の部品メーカーから調達したパーツでもインドネシア産だったりする。もちろんその他の海外メーカーの部品も混じっている。
しかし、プリウスを作る工場は日本国内にあるから、円高の時には海外から輸入する部品は割安だった。当然、新車時に使うエンジンオイルやプリウスの走行用バッテリーの“材料”も海外調達のはず。もちろん、ボディを構成する鉄も全部輸入。円高故に原油も安いので当面の生産工場で使う電気代も安い。つまり、円高ならプリウスを作る経費がすべて安いわけだ。ついでにデフレという言い訳で何年も賃上げのない(ボーナスは下がり続ける)人件費も安い。すなわち、デフレ下ですべての経費が安価に抑えられた結果、プリウスは“安く”生産できたのだ。
1990年代から日本の自動車メーカーは円高対策とアメリカの圧力で、現地生産を積極的に推進してきた。2002年にトヨタの海外生産台数は総生産の40%だったが、2011年には60%(524万台)だ。ホンダ、日産はさらに苛烈で2011年の海外生産は76%にもなった。
日本で生産して輸出しているモデルはトヨタでいうならプリウスのような高度な技術が必要なモデルかレクサスのような高価格車だけだ。しかも、最新のアメリカトヨタの工場ではプリウスの生産もスタートさせる予定。次にレクサスの生産も視野に入れている。
日本のメーカー各社はこれまでの為替変動から学習して、できるだけその影響を受けない施策を徹底して取っている。最大利益が得られる場所で必要なクルマ作り、その部品を調達しているのだ。
安部政権下の円安は輸出産業にとって追い風とみるのがふつうだ。単純に今3月期決算は上方修正している日本車メーカーが多い。円安の恩恵を受けて、トヨタも5年振りに黒字決算となる(はず)。
今後、円安が一段二段と進むことはないだろう。安部政権の口先誘導による円安は、もくろみどおり株価も引き上げた。まさに「安部バブル」だ。
しかしながら、前述したように生産そのものの国際化のなかで円安利益は短期的な効果しか無く、近視眼的な見通しといえる。メーカー首脳も今後の世界のマーケットを注視する。(編集担当:吉田恒)
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