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【関心高まる知的資産】大量特許出願で求められる特許の活用
<大量特許出願で求められる特許の活用>小笠原秀征
我が国の国内特許出願件数は、2001年の約44万件をピークに横ばいとなり、リーマンショック以降は35万件を下回り推移しています。しかしながら、現在でも大手電気メーカーを筆頭に、莫大な予算をとって毎年数千件の特許出願を行う企業も少なくありません。
では、なぜそんなに大量の特許出願を行う必要があるのでしょうか。
それは、一つの製品を開発・販売するために、その技術に関連した特許権を網羅的に取得しないと、安心して製品を売れない時代になってしまったからです。
ご記憶されている方も多いと思いますが、1992年、ミノルタ・ハネウエル特許紛争事件がありました。ミノルタは、カメラの自動焦点技術において、ハネウエルの特許を侵害したとして、約1億2,750万ドル(当時のレートで約165億円)の和解金を支払うことになってしまいました。
これ以降、大手企業は特許権取得のプライオリティを高め、大きな予算を投じて大量の特許出願をするようになってきました。
そうなると必然的に特許戦略とコストの最適化が極めて重要な経営課題となり、この頃から企業内に知的財産部門を戦略的組織として設置するところが増えてきました。そして2003年(小泉政権時代)、知的財産基本法が施行され、知財立国宣言がなされて知財花盛りの時代に突入しました。
さて、その後どうなったのかと言いますと、良い面ばかりではありません。新聞等で報道されているとおり、大企業のなかには大量に取得した特許を有効活用できず、保有コストが大きな負担になってきたのです。現在特許庁に登録されている存続中特許(有効な特許)件数を調べると、約180万件あります。これだけ大量の特許があるなかで、はたして何件が実質的に利益をもたらしているのか、ということが問題になります。最近では、せっかく取得した特許を切り捨て、売りさばくところも増えてきました。
前回ご説明した知的創造サイクル(知財の創造・保護・活用)は、保護のための創造ではなく、活用のための創造でなくてはなりません。急増する中国の特許出願件数が象徴するとおり、日本企業も予断を許さない状況下にあります。また、TPPやFTAをはじめとする本格的自由貿易の時代は目の前に来てきます。
だからこそ日本企業は、保有特許の実質的活用度合を明確に評価し、将来に向け利益を生み出し国際的に通用する高いレベルの特許戦略策定にいち早く取り組むべきです。(コスモテック特許情報システム株式会社 取締役 小笠原 秀征)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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