「即刻買い」号令の「クロダミクス」相場に呼応し早めに低位値ごろの地方株でファンド運用=浅妻昭治

2013年4月8日 10:29

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

 日銀の黒田東彦新総裁には、ビックリさせられた。4月3~4日開催の金融政策決定会合後の記者会見での発言である。時折、眉間に皴を寄せ苦虫を噛み潰したような表情に変わるのとは裏腹に、かつての大手証券の株式部長でも尾っぽを巻いて逃げ出してしまいそうなカンカンの強気をぶち上げたからだ。傍らに置いたフリップを示しながら、「資産価格のプレミアムに働き掛ける」、「戦力の遂次的な投入はしない」と言ってのけた。

 これは、リスク資産の株式の「総買い」、「即刻買い」号令である。現在、時の人となっているあの予備校講師の決めセリフではないが、「いつ買うの?今でしょう」と訴えているようなものだ。それも、資金の究極の出し手、胴元が宣告するのだからこれほど確かなものはない。しかも瞬間風速でなく、消費者物価が2%以上上昇まで少なくとも2年間は継続すると言い切ったのである。個人投資家、外国人投資家ならずとも、すべての市場参加者が、かつての兜町の超強気フレーズの「女房を質に置いても株を買え」とばかりに走り出したことは間違いない。

 その証拠に、5日の東証1部の株式売買高は、64億4900万株と過去最高を更新し、主力不動産株や小売株でストップ高が続出、年初来高値更新銘柄は、1部上場企業数の実に22%を占める384銘柄にも達した。

 この大商い・株価急騰の「クロダミクス」相場の渦中で、目立った株価現象も起こっている。各種株価ランキングのなかに、当日の寄り付きからの上昇率を比較するランキングがある。このなかに地方銘柄、ローカル市場株が数銘柄ランクインした。5日の全市場ベースのランキングでは原弘産 <8894> (大2)、丸栄 <8245> 、阪急阪神ホールディングス <9042> などがこれに当たる。

 地方銘柄は通常、主力株が大きく上値を追って高値膠着感を強め始めた相場の最終盤で、主力株への比較感から出遅れ株物色が波及するのが相場トレンドとなってきた。例えば、1980年代の資産バブル相場でも、首都圏中心の含み資産株をほぼ漁り切ったあとに、地方都市への地価上昇伝播思惑を強めて地方銘柄にアタックした。それが今回は、「バズーカ砲」とも形容された黒田総裁の「即刻買い」号令とともに、急騰する主力株を横目にみて即、比較感を強めて買い進まれて、ランクインしたのである。

 今年3月21日発表の公示地価では、首都圏など都市部で底入れの兆しを強めたが、地方圏ではやや下落率を縮めたものの、なお都市部との格差を際立たせた。だから株式市場の今回の地方銘柄のランクインは、この不動産市況に先立って、全員参加型で地方銘柄が主力株とともにスタートラインから横一線で買い上げたとも受け取れるのである。となれば、主力株がバリュエーション的にかなりの水準まで買い上げられているなかで、出遅れている地方銘柄をマークする投資スタンスも十分に成立することになるはずだ。

 もちろん地方銘柄は、値付きもマバラで、商いも薄いのがネックである。自分で買いに入って高値をつけ、売りに回って安値まで急落することなど日常茶飯事である。しかも高値で買い付いたが最後、5年、10年は塩漬けを覚悟しなくてはならない値動きの乏しさも半端ではない。

 そこで地方株にアッタクするとして、こうした株価特性を乗り越えるために、ファンド投資を心掛けてみるのがベターとなるかもしれない。地方銘柄を複数組み入れるプライベート・ファンドを設定、運用する方法である。これなら一部銘柄がシコッても、ほかの銘柄でカバーして相対的なパフォーマンスを示現してくれる可能性がある。プライベート・ファンドを設定するとして、資金的に制約のある個人投資家は、どうしても組み入れ対象は低位株ということになる。それも株価が低位なら低位であるほど望ましく、この候補株としては地方の百貨店株、電鉄株にアプローチしてみたい。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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