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iPS細胞関連・農業関連株に続きアベノミクス第3の政策関連株浮上=浅妻昭治
<マーケットセンサー>
捜している資料が、どうにもみつからない。もう10年にも、20年にもなる。机の引き出しの奥深く、物置に放り出している段ボールの山の中まで当たるのだが、どこに紛れ込んだのか出てこないのである。たった1枚紙の資料である。1枚紙に過ぎないが、歴史的な資料である(と信じている)。とにかくその資料が、あの資産バブルの引き金となったからである。
それは、旧国土庁が、オフィスの需給動向を試算し、日本の国際化、外資系企業の対日進出の活発化で需給が逼迫化すると予想した資料である。これをキッカケに再開発ブームに拍車が掛かって、地価が急騰するとともに、地上げ、土地ころがしなどが横行し、株式市場では、京橋関連株、堀留関連株、ウオーターフロント関連株などの含み資産株が次々と人気化、日経平均株価は、あの歴史的な高値3万8915円まで突き進んだ。
折からの円高不況対策の金融緩和策で巷には余剰資金が溢れ出し、企業の最優先経営課題が財テクとなっていた時代である。その宴に酔ったデフレ・マインドを旧国土庁のペーパー資料が刺激して、不動産市場と株式市場に財テクマネーが流入、一億総不動産業化しバブルに拍車を掛けたのである。
もう遠い遠い歴史の片隅に埋もれ、いまではそれこそ「兵ものどもが夢の跡」となっているが、最近、この旧国土庁のペーパー資料を彷彿となせるような出来事が起こっている。例の安部内閣の経済再生本部の下に設置された産業競争力会議に提出された資料と、それに基づく株式市場での急騰株の続出である。iPS細胞関連株の相次ぐストップ高や農業関連株の軒並み高は、かつてのバブル相場を想起させるところがある。
この二大急騰セクターは、今年2月18日に開催された第2回産業競争力会議で提出された資料が、その引き金となった。iPS細胞関連株は、成長戦略の要として科学技術・イノベーション政策の推進が打ち出され、その中心にiPS細胞による再生医療がセットされたことが要因である。一方、農業関連株は、TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加への国内への地ならしとして農業輸出額を1兆円へ倍増させるなどの成長戦略が盛り込まれたことが株価を押し上げた。
これまでもこうした類のビジョンや経済政策が打ち出されたことは数限りなく多いが、それが旧国土庁のペーパー資料のように大きな反響を呼ぶことは稀であった。それは資料やビジョンの供給側(サプライサイド)の政策意図や質にネックがあるのではなく、むしろ需要側(デマンドサイド)に問題があることが多かったのである。「失われた20年」に痛めつけられ、デフレ・マインドに落ち込んでいれば、どんなおいしいニンジンを目の前にみせられても「笛吹けど踊らず」の結果になることは、火をみるより明らかであった。
しかし今回は、「アベノミクス」はまだ何も政策効果を手にしていないが、「政策期待」で為替相場は急速に円高を修正、株価は、急騰に次ぐ急騰となった。もうこうなると「政策期待」を通り越して、株価は「政策催促」相場の様相を濃くしていると判断せざるを得ない。
政策のサプライサイドよりもデマンドサイドのマインドの変化を反映していることを示唆しているということである。デフレ・マインドに飽きて、インフレ・マインドが醸成されているのかもしれず、産業競争力会議の資料は、かつての旧国土庁のペーパー資料と異ならないということになる。もちろん競争力会議の資料は、旧国土庁資料と違ってカバー領域は多岐にわたり、分量も大部となっているが、もしこの両資料のマインド的な位置付けが一致するようなら、競争力会議の資料のなかから次の有望セクターをリサーチすることも十分に投資戦略として成立することになる。iPS細胞関連株、農業関連株に続く「アベノミクス」の第3の政策関連株を発掘できることになりそうだ。(本紙編集長・浅妻昭治)(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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