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本に載らない現場のノウハウ-中小企業の人事制度の作り方:第9回 評価制度の検討(2)(1/2)
今回も「評価制度」を検討していく上で、こんな方法を取るとこんな効果は考えられるがこんな反応になることもあるというような留意事項を、私が経験してきた事例の中から参考になりそうなものでご説明していきたいと思います。
■評価項目の数、評価ランク(段階)の数をどうするか
一般的な評価制度では、あらかじめ設定された評価項目を所定の評価ランク(一般的に多いのは5段階評価)で評価して、それらを総合したものを評価結果として扱うことが多いと思います。
制度設計する上では、評価項目をいくつくらい設けるか、それをどんな方法(何段階評価?)で評価するのかは、必ず決めなければならないことです。
評価項目数を多くすればいろいろな事項を細かく網羅できますが、評価項目の内容と実際の仕事内容との間での不整合が起こりやすくなるので、それらを常にチェックする必要があります。また評価者にとっては、評価項目が多ければやはり評価を実施する上での作業負荷は高まります。
評価ランク(段階)の数についても、「5段階では足りない。7段階だ。」「真ん中を作らないように4段階だ」「チェックシート方式だ」「点数制だ」など、考え方は様々です。ちなみにチェックシート方式はできたかできなかったか、イエスかノーかの2段階評価、100点満点の点数制であれば100段階評価ということになりますので、すべての方法が評価ランクによる評価として捉えることができます。
一般的に言えば、数が多ければ幅を表現できるがあいまいな点が増え、少なくなれば白黒はっきりしてくるが、程度や度合を表現できず、数で捉えられない要素を評価しづらいということになります。
まず評価項目数に関しては、制度を真面目に考え、基準を統一しよう、きちんと運用させようという意識が強いほど、数が増える傾向になります。そうなると当然評価する作業自体は大変になるので、一つ一つの項目を細かく見ることをしなくなり、結果としてだいたいみんな普通くらいという中心化傾向や、何でも前と同じというような形骸化の傾向が出てきます。
こんなことを解決するために一層の細かい基準作りを始めたりしますが、さらに運用負荷を高める形になり、評価制度を運用する上の問題解決にはなかなかつながりません。
評価ランクの数は、この中心化傾向や形骸化の対策として出て来ることがあります。
「“みんな普通”にはできないように4段階評価にしよう」「チェックシート方式でできたかできないかをはっきりさせよう」「普通と評価しているところをさらに3分割して7段階評価にしよう」などというやり方です。
しかし、こういうやり方をとったとしても、中心化や形骸化が起こってしまう本質的な所は変わっていないので、今度は出て来る評価結果が実態にそぐわなくなっていってしまいます。
これは評価プロセスや評価結果の中で起こってくる課題を、制度や仕組みなどの小手先の改訂で解決しようとしても、なかなか思った通りの動きにはならないということです。私がずっと申し上げてきている「制度で決める部分」と「運用に委ねる部分」のバランスの取り方に通じるところです。
私が制度設計をお手伝いする場合、それぞれの会社の状況を議論しながら形を作っていきますが、その議論の結果、評価項目数では10項目前後(7,8~12,13項目くらいまで)、評価ランク数では5段階というような、ごくありふれた構成での設計となることがほとんどです。これにはそれなりの理由があると考えています。
評価制度の本質を理解してもらいながら、評価するということに熟練していってもらった方が評価制度の運用はうまくいくと考えると、オーソドックスな構成の方が理解しやすいですし、いろいろな検討や試行錯誤をした結果、オーソドックスといわれるところに行き着くことが多いということも言えます。
もちろん、その会社の状況によって制度は異なりますが、オーソドックスとは言えない特徴的な評価制度になるのは、どちらかというと業界特有の事情や、企業風土や業務上の特殊事情であったり、あくまで本質的な変化を目指すための一時的なものであったりということが多いようです。
特に中小企業の場合は、評価者の評価スキルや作業負荷の状況を考えると、理解しづらい複雑な制度や手間のかかりすぎる運用方法、中でも多すぎる評価項目と複雑な点数化や評価ランクづけを行うような制度は避けておいた方が良いと思います。
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