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本に載らない現場のノウハウ-中小企業の人事制度の作り方:第5回 人事制度のコンセプトを考える (1/4)
いよいよ人事制度を構築するための、実際のプロセスに入っていきます。まず始めの一歩として、「人事制度のコンセプトを考える」というところからご説明していこうと思います。
■実は最も大事な「人事制度のコンセプト」
皆さんが人事制度作りといって思い浮かべるのは、制度そのものをどんな構成にするのか、仕組みをどうするかというところだと思います。当然制度の目的はあるでしょうが、そこで出て来るのは「仕事内容を具体的に示す」「公正に評価できるようにする」「コミュニケーションを円滑にする」などというようなものが多いようです。しかし、人事制度の本来の目的は「人的資源(人材)の活性化を図る」ことで、“具体的”とか“公正”というのは、それを実現するための手段にすぎません。
人事制度のコンセプトとは、この本来の目的に近く、もう少し前段の部分を含めたところで、「人事制度の理念」「人事制度の土台」というのが最もしっくりくると思います。私が人事制度構築をお手伝いする際に、最も重視しているプロセスは、この「制度のコンセプト作り」です。
実際に人事制度構築を行うにあたって、だいたい初めに出て来るのは「もっと給料に差がつくようにしよう」とか「年次に縛られず昇格昇進ができるようにしよう」とか、「職務基準を作って仕事内容を具体的に示そう」とか、いきなり各論の話になることが、私の経験上でも多いです。
しかし、人事制度の本来の目的である「人的資源(人材)の活性化を図る」に照らしたとき、例えばなぜ給料に差がつくようになると、人材が活性化するのでしょうか?
給料に差がつくということは、当然勝ち組と負け組ができるということで、社内で競争しなければならないということです。そうなると勝ち組は活性化するかもしれませんが、負け組には逆の効果を生むかもしれません。競争心の強い人しか残れない職場になるかもしれないし、個人の競争を煽ることによって、チームで動くことがおろそかになるかもしれません。
意図した効果と違った現象が出てきて、その現象に向けた制度改訂をモグラたたきのように繰り返す・・・なんてことが非常に多く見られます。
こういうことが起こる最も大きな原因は、制度の根幹となる基本コンセプトを持っていないため、目的と手段が混同されて、目先の現象に対する付け焼刃的な対応を繰り返すことにあります。要は土台がない、理念が共有されていないために、講じる手段、対策に「軸」というものがないのです。
私が「人事制度のコンセプト」を重視するのは、こんなところに理由があります。
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