動乱の飲料業界による、各社の経営戦略

2012年6月11日 11:00

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記事提供元:エコノミックニュース

 アサヒによる味の素からのカルピス買収や、サントリーと青島ビールとによる合弁会社設立など、近時、動きが活発な日本の飲料業界。成熟し、さらなる拡大の見込みが薄い市場において、各飲料メーカーは独自の経営戦略を立てて存続や業績の伸長を図り、その動向が具体的に目に見えて現れてきたと言えるであろう。

 サッポロは、昨年3月にポッカグループを連結子会社化し、来年1月にはグループの食品・飲料事業を担うサッポロ飲料とポッカの統合新会社である「ポッカサッポロフード&ビバレッジ」社を新設を予定するなど、グループの構造が大きく変わる節目となっている。また、2011年はポッカとの経営統合に伴う追加株式取得359億円、サッポロ飲料のCB買収に伴う株式取得71億円、サッポロベトナム社ロンアン工場設備投資24億円などの戦略投資を実施しているが、2012年から2015年の間には1500から2000億円程度の規模を想定している。

 また、6月7日にベトナム飲料製造・販売会社であるインターフード社の株式追加取得完了を発表したキリンは、コミュニケーションの活性化および部門・組織を超えた連携強化を通じたグループシナジー創出を目的として、グループ本社の移転、国内グループ会社の本社組織拠点集約を実施。さらに、長期経営構想「キリン・グループ・ビジョン2015」実現に向けた「2010-2012年キリングループ 中期経営計画」の最終年度として、引き続き収益性向上に向けた施策を進め、グループ全体で企業構造改革やムリ・ムダ・ムラの排除などによる売上反転・拡大を進めるとしている。

 さらに、限られた経営資源を「製品の企画」と「自販機を中心とした販売」に集中し、地域や消費者に密着したネットワークを積上げ成長してきたダイドードリンコは、事業領域拡大を図る方針のようである。4月には、自販機飲料市場の拡大が見込まれる中国事業において、上海米源グループとの資本業務提携を発表。また5月に入ってからも、フルーツ加工食品の専門メーカーとしてフルーツを主役にした商品提供を続け、ドライフルーツゼリー市場のトップ企業であるたらみの100%子会社化を実施すると発表した。グループの持続的成長に向けた事業領域の拡大により、将来の更なる企業価値向上を目指すとしている。

 動乱の中で生き残るためには、いずれの企業も待ったなしの行動が求められているといえる。組織改革や安定市場の確保、事業領域の拡大など様々な方針が取られているが、どういった施策が功を奏するのか。飲料は日常生活の中で必ず目にするものであるだけに、今後最も目の離せない市場と言えるのではないだろうか。

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