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大ブーイングの「Jリーグ相場」は低PBR小売株で「大勝ち」期待よりも「六分勝ち」=浅妻昭治
まさに「Jリーグ」相場である。Jリーグと聞いて首を傾げる投資家も少なくなさそうなので、説明させていただくと、Jリーグとは、日本のプロ・サッカーリーグである。[写真拡大]
【浅妻昭治(株式評論家・日本インタビュ新聞社記者)のマーケット・センサー】
まさに「Jリーグ」相場である。Jリーグと聞いて首を傾げる投資家も少なくなさそうなので、説明させていただくと、Jリーグとは、日本のプロ・サッカーリーグである。そのJリーグの上位リーグのJ1で、今年は異変が起こっていて、現在の株式相場とそっくりなのである。年間34試合のうち3分の1を消化した前週5月12日の段階で、常勝クラブ、名門クラブと自他ともに認められている強力クラブが下位に低迷しているのである。
ガンバ大阪は、下位リーグのJ2への降格圏内の17位で、鹿島アントラーズは、降格圏ギリギリの15位、昨年、J2からJ1へ昇格後、即優勝した柏レイソルは14位と低迷中だ。いまでも日本代表へ何人もの中心選手を送り出し選手層の厚さを誇るクラブが、攻撃陣が機能せずに無得点試合を繰り返し、守備陣が崩壊して大量失点し、浮上の兆しさえ見せていない。敗戦試合のたびにテレビ画面に映し出される観客席の前で首をうなだれ、サポーターの大ブーイングを浴びる選手たちの姿は、目を覆いたくなる。
現在の株式相場も、かつての勝ち組主力株のパナソニック <6752> 、シャープ <6753> 、ソニー <6758> のエレクトロニクス御三家が、年初来安値に低迷し投資家や証券アナリストの大ブーイングに曝されているからJリーグと酷似し、例えられるのである。もちろんこの安値更新は、この4~5月に発表した今3月期業績が、前期の大幅赤字からの黒字転換を予想したものの、その黒字額が微々たるもので、市場コンセンサスに遠く届かないことが要因となっている。
しかし、この3社は、わずか3カ月前の今年2月は、まったく別の動きをしたのである。この2月は、3社が前期の第3四半期(4~12月期、3Q)決算を開示したときで、各社が、揃って前期通期業績を下方修正、2~3回目となる下方修正で、純利益の赤字転落、赤字幅拡大を発表したときだ。業績状況は、この4~5月よりもっとアゲインストであった。ところが株価の反応はまったく逆で、そのときつけた安値から年初来高値に向けて3割以上も急伸し、日経平均株価を大きくオーバーパフォームした。マーケットコメントとして「悪材料出尽くし」、「悪材料織り込み済み」などの大合唱となり、なかには「悪材料が計上できるのはまだまだ体力のある証拠、フトコロの深さの反映」などと極端な擁護論まで飛び出した。
もちろんこの急反発は、日銀が、バレンタイン・プレゼントといわれた追加金融緩和策を発動し、超円高を修正したことが大きなサポート材料となった。しかし、今回も、大型連休入り直前の4月27日に日銀は、さらに追加緩和策を決定したが、円高に歯止めがかからず、株安の防波堤にもなっていない。わずか3カ月前の相場好転が、何年も前の相場シーンのように遠去かり、思わず大ブーイングが口から飛び出す「Jリーグ相場」なのである。
毎度のことで前置きが長くなって恐縮だが、さてここからが本題である。この3月の主力株の急反発には、マーケット的には実は前段があった。昨年12月末から今年1月初めにかけて小売各社が、2月期決算の3Q業績を発表しており、この好業績を株価が好感高していた。とくにデパート株などは、高額商品の売れ行きが急回復しているなどと明るさいっぱいで、これで市場が暖まっているところに、日銀のバレンタイン・プレゼントが追撃材料となって、3月期決算会社の主力株の業績下方修正の悪材料を好材料とする急反騰を呼び込んだのである。
そこでいま提案したいのが、この年初相場の繰り返しである。小売各社は、6月末にかけて今期第1四半期(3~5月期)決算を発表してくるが、この決算内容次第で7月以降に続く3月期決算会社の第1四半期(4~6月期)業績の回復を確認できることになる。小売各社の今期業績は、市場コンセンサスを上回るケースが多かったが、3月期決算会社の主力株の業績評価とともに共倒れ、失速してしまったが、再発進が期待できることになる。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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