【今日の出来事&マーケット】日米欧の協調で欧州は立ち直れるか?=犬丸正寛

2011年12月2日 13:09

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

ヨーロッパの金融不安に対応するため、11月30日、「日銀」、「米連邦準備理事会(FRB)」、「欧州中央銀行(ECB)」、「英イングランド銀行」、「カナダ銀行」、「スイス国立銀行」が協調することで合意。

ヨーロッパの金融不安に対応するため、11月30日、「日銀」、「米連邦準備理事会(FRB)」、「欧州中央銀行(ECB)」、「英イングランド銀行」、「カナダ銀行」、「スイス国立銀行」が協調することで合意。[写真拡大]

■NYダウは好感も、日本は先行き不安で勢い薄い

  ヨーロッパの金融不安に対応するため、11月30日、「日銀」、「米連邦準備理事会(FRB)」、「欧州中央銀行(ECB)」、「英イングランド銀行」、「カナダ銀行」、「スイス国立銀行」が協調することで合意。これを受けて、30日(水)のNYダウは前日終値比490ドル高の1万2045ドルまで急伸、12月1日(木)も安値1万1974ドル、終値1万2020ドル(前日比25ドル安)と急伸後としては調整幅は小さく堅調な動き。好感している。

  日米欧の中央銀行が協調するのは、中央銀行のドル資金供給の金利を0.5%引き下げ、12月5日から実施期間を来年2月1日までとする。狙いは、企業に置き換えると、業績不振から「資金繰り」に困っている企業に資金提供を行うことと同じだろう。銀行1社での貸付は嫌だから、他の銀行も一緒に融資をしようという姿にも似ている。

  とくに、特徴的なことは、以前なら、今度の中央銀行6行に入っているはずの強い「ドイツ」が抜け落ちていることだ。逆に、今回のドイツは借りて側に入っている。もはや、強いはずのドイツ、フランスでさえヨーロッパの身内(ギリシャ、スペイン、イタリアなど)の面倒を見切れなくなっているということである。借金が膨らんだ長男に対し、親、兄弟だけでは面倒見切れないから、親戚へ頭を下げて回っているということに近い。

  国家で考えると難しいが、個人、企業という姿に置き換えてみると先行きに対する見通しは明確となるはず。個人なら、グータラ生活が直って本当に真剣に働く気持ちになるのか。企業なら労使一体となってコスト削減に取り組み、勤労意欲を高め、企業業績を立て直すことができるのか。この1点に尽きる。巧い事を言い繕えば、また助けてもらえるという甘い気持ちのままなら、企業なら倒産の道しかない。国家は図体が大きいから厄介なだけだ。しかも、庶民の機嫌取りを狙って政治も動くから混沌とする。

  2003年には日本がバブル崩壊で苦しんだ。いまだにその重荷に苦しんでいる。2008年にはリーマンショックというアメリカ発金融不安、今回は歴史的にも文化文明の進んでいるヨーロッパ発の金融不安。地球全体に「豊かさ」を求め過ぎた反動が来ているようだ。

  2008年のリーマンショックの時は世界各国が、中国でさえ50兆円近い政府支出によって経済を支えた。その結果が、「財政悪化」、「物価高」、「貧富の格差」を招いた。今回はリーマンショック後のような、膨大な政府支出に頼ることはできない。金利を下げて、協調融資することということだろう。

  今後については、次のことを見ておきたい。

 (1)ギリシャ、イタリア、スペインなどの経済が根本的に良くなるのかどうか。また、助けてもらえるという気持ちを捨てて再建に取り組むことができるかどうか。

 (2)今回、強いドイツが借り手側に回ってしまったように、「日本」が先行き借り手側、救済される側に回らないかどうか。

 (3)日本の野田政権は、それを避けるために、「増税ありき」政策を打ち出している。果たして、国民はどのようなジャッジを下すか。日本の株式マーケットが、NYダウほど好感していないのも、この当りに心配のタネがありそうだ。

 (4)ドルに対抗するために創設された意味合いもある「ユーロ」の弱体化により、今後、「ドル復権」があるのか。あるいは、「中国・元」が台頭してくるのか。(執筆者:犬丸正寛 株式評論家・日本インタビュ新聞社代表)

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