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■さまざまなIT課題が山積
経済産業省IT経営力大賞2010年認定を受賞しました共立電機製作所様(以下:共立電機社)は筆者がITコーディネート活動でご支援を開始する前に既に様々なITシステムの導入で生産の「見える化」を実現し、管理業務の高度化で、さまざまな課題解決に成功していました。
同社がまず導入したのは、設備稼働管理システム。静岡県と中国上海にある同社の工場で、設備それぞれの稼働状況が時間や量、台数単位などで把握できるようになっていました。
そのことにより生産工程それぞれの問題が、設備の稼働状況に現れると判断し、「リアルタイム設備稼働管理システム」と呼ばれるソフトをシステム会社と共同開発、その結果、遠隔地のマネジメントも瞬時に本社から指示が出せるようになっています。
同システムを導入したのは2007年から。今では、稼働率が導入前と比べて平均30%程度は上がりました。また納期についても、「無理な案件について、価格面や納期延長など取引先と交渉できるようになった」としています。
もちろん、受注品が順調に仕上がっている一方で稼働していない設備があれば取引先からの依頼を積極的に引き受けることにもつながっています。社員の能力を高めながら、なおかつ納期遅れの解消、安定した受注などを実現していることになります。
■会社全体のあるべき姿の「見える化」による全体最適化活動の効果
筆者は、中小企業IT経営力大賞2010の申請支援で、IPAの紹介を受けて共立電機社に関わり始めました。
これまでのシステム構築の足跡に敬意を払いながらも、販路開拓や世界で競争できる体制づくりなどで協力関係が構築できる攻めの「見える化」についての支援を行いました。また、社内の生産工場で現場の業務フローの分析を行い、ムリ、ムラ、ムダの削減などに貢献しました。
精密機器の金属加工部品を製造している共立電機社は、生産の「見える化」に向けて設備稼働管理システムを導入、次のステップでICタグ活用の「RFID工程情報収集システム」を構築しています。
その経緯としてそもそもIT化を進めることになったのは、「下請業者として強くならなければならない」(岸本代表取締役)との強い思いからでした。
大手メーカーからの国内下請業者への発注は、経済のグローバル化によりアジア地域へのシフトなどで減少傾向をたどっています。
このような状況下で、受注を増やすためには作業効率の向上だけでなく得意先の満足度を高めなければなりません、また、取引先である大手メーカーは下請業者に対して、時には価格や生産量、納期などで無理な要求をしてくるケースがあります。
そのような場合、下請業者が自社の能力をきちんと把握していなければ、その要求を呑まざるを得ないこととなります。
これらに対しての取引先の無理な要求に対してきちんと実状を説明できなければならないと判断した結果、生産現場の見える化を実践することとなりました。
■単なるIT導入を目的にせずに会社全体の業務プロセス全体最適化が重要
同社は、石油探査機やジェットエンジン、電子機器など精密機器の金属部品の製造を得意とし、チタン合金やインコネルなどの金属加工に強い企業として知られています。
そのため、最近では石油探査データの提供会社の主力事業と契約を結んでおり、このビジネスで売上比率の約半数を占めています。
国内では、大手IT関連メーカーを主要顧客としているものの、国内工場は海外に徐々に進出する中で、新たな顧客獲得には他社に絶対に真似できない技術力が必要と分析し、新規マーケットを完全に海外シフトとしています。
その時に重要なこととして、高付加価値品製造技術の強みは日本にあること、但し、国際競争力の中でコストに関する価格勝負になった際には自社の中国上海工場での製造を基本に、遠隔地をうまくつなぐ道具としてITを活用してマネジメントを行っています。
当時、筆者が協力して共立電機製作所に対して守りの「生産の見える化」を有効に活用しながらも攻めの「海外市場を含む市場開拓」のアドバイスを行いました。
現在、経営者の独自のマネジメント哲学と技術+ITが上手く融合し、非常に好業績を上げています。
こうした単なるIT導入を目的にせずに会社全体の業務プロセス全体最適化が重要であることが本好事例をご覧頂きお分かり頂いたと思います。
では、次回は『経済産業省IT経営力大賞事例企業紹介4(建設業)』 についてお話していきましょう。是非、お楽しみに!!
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