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オリンパス社長解任と日本企業のグローバル経営(1/2)
■就任半年の外国人社長が解任された!?
この原稿は、10月14日金曜日の午後に各種メディアの報道内容を見てから書いている。今年4月に社長に就任したマイケル・ウッドフォード社長が、本人以外の全取締役の賛成により社長の任を解かれ、業務権限のない取締役となった。このポジションにいつまでいるかもわからないという。
事実関係はまだ分からない。また、私はオリンパス社、またはウッドフォード元社長のどちらの肩入れをするつもりもない。
ただ、この象徴的な事件から何が言えるかを考えてみた。このオリンパス事件についての論評ではなく、この事件を契機として日本企業のグローバル経営について考えるのが目的だ。今後よりグローバルでの経営が求められる中で、これ以上ない学習の機会だからだ。
こうした趣旨から、オリンパス社の状況を材料と解釈させていただき、以下に日本企業のグローバル経営に関する問題を取り上げてみる。
■グローバル経営に関する問題:コミュニケーション
1981年から子会社に在籍し、実績を上げてきた人間を抜擢した後、半年で「他の経営陣との経営の方向性と手法のかい離」を理由に解任するとはどういうことなのか?
オリンパス社菊川会長(当面社長職兼任)は、ウッドフォード社長解任に対して「日本人の経営者ではやりにくいことを実現してくれるとの期待はあったが、創立92年に培われた経営スタイル、日本の文化を経営に生かさなければいけないことについて、彼は理解を進められなかった」と話している。
社長就任の段階でどこまで「やりにくいことの実現」と「日本のやり方」に踏み込むか、そのスピードや社長の権限等について、どこまで具体的に詰めたのだろうか。私には大きな疑問が残る。
今回の社長解任と関連しているのは、実は海外での契約書のまとめ方、ビジネスディールの作り方というレベルのコミュニケーションの基本に関連する部分が大きいと感じた。
論点を明確にしたり、詳細だが必要な部分を、日本人からすると「ここまで言わなくてもわかるだろう、長年やってきているのだから」と考えてしまう。
変革を期待するのであれば、その代償としての抵抗勢力の台頭や、マネジメントスタイルの違いは当然想定できたはずだ。しかし、「彼は1981年から我々と一緒にやっている。当然我々のやり方を理解したうえで、難しい改革をしてくれるのではないか」と期待したのではないか?
今まで長年やってきて、欧州で実績をあげている。考え方も分かっている。何をしたいか会社としては実は不明瞭だが、「彼ならやってくれるのではないか」というぼんやりとした期待を持つ。そしてその思いを話す。
社長就任を持ちかけられた側は、「本当にどこまでのことをしてもよいのか。この人たちは本気なのか」と思いながら、も総論のレベルで「会社を真のグローバル企業にしていきたい。競争力をつけて、筋肉質なオペレーションを実現する。その結果ひねり出したキャッシュで、新規の投資を行っていく。地域戦略も見直すつもりだ・・・」
詳しくは、自分が社長になってから、自分なりのやり方でやる、という気持ちでいるであろうことは欧米の人間でなくとも、日本人でも同じであろう。
事実を知らないものの想像であり、誤っていたらご容赦いただきたい。ただ、冒頭申し上げたように、1つの材料と解釈させていただくと、私には同様の現場にいたことも含め、片手に余る事実を見てきている。
こうした曖昧さ、日本人らしさはグローバルにビジネスを行う上では、訂正すべきものだ。
既存の日本人役員との関係や、指示命令系とはどうなのか。目標の持ち方や、意思決定の仕方について、どこまで実際に詰めただろうか。
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