日産、5社共同でEVタクシー実用化に向けた実証研究を京都市などで実施 

2011年7月6日 01:51

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EVタクシー運行最適化システムのイメージ図

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 日産自動車は5日、モーション、兼松、システムオリジン、リサイクルワンに日産を含めた5社が共同提案した「EVタクシーの実用化促進と運用方法確立のための実証研究」が、環境省「平成23年度地球温暖化対策技術開発等事業」に採択されたと発表した。同事業は、温室効果ガス排出量の削減につながるEVタクシーの普及促進を図るために、効率的なEVタクシーの運用を可能とするシステムの開発と、その実用化促進に向けた実証実験を、5社と大阪府、京都府、京都市の3自治体が協力して実施するもの。

 EVタクシーの普及を促進させるには、「航続距離に制約があり、LPG車両並みの流し走行が困難である」、「充電や充電待ちに要する時間のロス」など、現行のハード面からの課題を、ソフト面から解決する手法を開発・実証し、EVタクシーのビジネスモデルを確立していく必要がある。

 そのため、5社は、スマートフォンによる「EVタクシー呼出アプリケーション」と、乗客からの呼出に応じるための「車載タブレット端末用アプリケーション」を開発し、「EVタクシー配車システム」を介して乗客とタクシーのマッチングを行う。同時に、EVタクシーの電池残量と充電器の空き情報を基に、近隣の空き状態の充電器を示して適切な充電指示を行う。これらを通じて、空車走行や充電待ち時間を削減し、EVタクシーの営業機会を最大限に創出するためのシステム構築を行う。

 このシステム構築においては、大阪府、京都府、京都市の3自治体が整備した充電設備の利用やタクシーの乗り場の確保等の協力を得て、大阪「商業都市モデル」および京都「観光都市モデル」の2つのモデルで実証実験を行う予定。

 モーションは、レコメンドエンジン等で培ったデータマイニング技術を活用し、EV車両およびEV充電器の効率的な運用のための技術開発を行う。また兼松と共にEV用充電インフラ事業のプロジェクトチーム「VOLTA」を結成し、充電器の管理、認証、充電器位置・満空情報の配信システムの開発し、京都、大阪にて実証実験を行うなど、EV普及のためのIT基盤の開発に取り組んでいる。

 兼松は、EV用充電インフラ事業の立ち上げに取り組むプロジェクトチーム「VOLTA」を結成し、充電器の認証・課金システム、携帯端末による充電器位置情報の配信や充電器予約制御等を可能にするシステムを開発し、各地で実証実験を行っている。昨年度は大阪府電気自動車(EV)タクシー普及啓発事業を6社による共同企業体として大阪府から受託し、その代表会社を務めた。これらを通じ、充電インフラやEV向けアプリケーション開発などによる、EVタクシーのビジネスモデル化を目指した取組みに注力している。

 システムオリジンは、タクシー向けシステム専業で30年近く業界と共に歩んできたソフトハウス。国内約900社のタクシー会社と取引があり、台数ベースでは全国約3割のシェアをフォローしている。タクシー経営者層・管理者層に向けた各種セミナーを開催するなどタクシー業界により深い貢献を目指している。昨年度は大阪府電気自動車(EV)タクシー普及啓発事業に共同体として参加した。EVタクシーの動態情報を管理してEV専用乗り場からの呼び出し要請に対し、最適車両を自動配車するシステムを開発し運用した。

 日産はルノーと共に「ゼロ・エミッション車で世界のリーダーになる」という目標を掲げ、世界各国の政府や自治体、企業などと合わせて90件以上のゼロ・エミッションモビリティに関するパートナーシップを締結している。大阪府へも本年2月に「日産リーフ」50台をEVタクシーとして納車しており、今後更なるEV普及のために、タクシーの配車や充電タイミングを支援する車両情報提供システムの開発に取り組んでいく。

 リサイクルワンは、環境・エネルギーに特化したコンサルティング会社として、秋田県、愛知県、福井県、京都府、大阪府のEV普及のための政策策定業務を受託するなど、EV・PHVタウンを中心とした自治体、政府機関、公的研究機関等のEVに関わる調査、コンサルティング、実証実験を遂行してきた。さらに、大手企業のEV関連のビジネスコンサルティング、新規事業アドバイザリーなど、顧客は官民を問わずEV業界に広くコンサルティングサービスを提供している。

 大阪府は、昨年3月から運用している世界初の充電予約・認証システム「おおさか充電インフラネットワーク」に接続した急速充電器23基を活用して、大阪「商業都市モデル」の実証環境の提供等を行う。同時に、同事業を通じて、昨年度に大阪府が導入支援を行った50台のEVタクシーやエコタクシー専用乗り場の利用を促進することにより、大阪府内でのEVタクシービジネスモデルの確立とさらなるEVの初期需要創出に努めていく。

 京都府は、京都府が設置した急速充電器14基の通信ネットワーク化を行い、関西広域連合での充電インフラネットワークの拡大を推進するとともに、「京都府次世代自動車パートナーシップ倶楽部」会員である5社と連携し、『大都市観光地モデル』や『北部観光地モデル』として「EVタクシー運行最適化システム」の実証実験及びEVユーザー向け充電器利用状況をリアルタイムにインターネットで情報提供するシステムの実証実験を行い、タクシーだけでなく様々なEVユーザーの最適な利用環境を確立し、更なるEV普及に努めていく。

 京都市は、京都市が設置した急速充電器3基を通信ネットワーク化すること、および京都市内の観光資源を活かしたEVタクシー乗り場やEVタクシーの空車走行を減らすための待機場所を確保すること等を通じて京都「観光都市モデル」の実証環境整備に協力すると同時に、「歩くまち・京都」における観光地のタクシー渋滞緩和等の可能性を検証していく。

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