『きものライフの道案内人』に徹し高成長の日本和装HD:吉田重久社長に事業展開を聞く

2011年6月29日 10:58

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

成長性に乏しいとみられるきもの業界で高成長の日本和装ホールディングス<2499>(JQS)。きものを売ることより、きものの着方、着る機会を増やす「きものライフの道案内人」としての役割に徹している。

成長性に乏しいとみられるきもの業界で高成長の日本和装ホールディングス<2499>(JQS)。きものを売ることより、きものの着方、着る機会を増やす「きものライフの道案内人」としての役割に徹している。[写真拡大]

■日本和装ホールディングスの吉田重久社長に聞く

 成長性に乏しいとみられるきもの業界で高成長の日本和装ホールディングス <2499> (JQS)。きものを売ることより、きものの着方、着る機会を増やす「きものライフの道案内人」としての役割に徹している。「和」を基本として衣・食・住への事業展開も計画している。

★消費者・生産者・取引先・株主・社員の『5方良し経営』

――個人投資家の皆さんは、御社のビジネスが「きもの」など和装関連ということで、伝統としては大切でも、業界の伸びとしてはどうだろうという視点を持たれていると思います。まず、「きもの」業界についてお願いします。

 【吉田社長】 当然、みなさんは、きもの業界の成長性に関心を持たれると思います。かつて、きものマーケットは2兆円を超えるたいへん大きい規模の市場でした。それが、近年では3000億円程度まで縮小しています。生活の洋風化という大きい時代の変化があったことは否定できません。しかし、それだけではありません。きものを着たくても着かたがわからない人が圧倒的に多いことがあります。しかも、きものに対する情報が不足しています。とくに、消費者がきものを購入するための交渉力のないことが重なっています。その結果、きものは冠婚葬祭のときだけに着るということになっています。昔なら母から子に、そして孫へと教えられてきた着付けがなくなっていることが、人々をきものからますます遠ざける結果となっています。

――その環境の中で、2006年9月に株式上場を果たされ、その後も好業績を挙げておられます。どのような事業展開ですか。

 【吉田社長】 当社のビジネスは「きもの販売仲介業」です。きもの、帯などの小売や卸売は一切手がけていません。着付教室の受講料収入はありません。無料のきもの着付教室で、きものを着られる人を増やし、きものを着る機会をつくり、そして、きものの価値を広く知らしめる啓蒙普及をしています。あくまでも、「きものライフ」の道案内人という役割に徹しています。

――収入はどのように得ていますか。

 【吉田社長】 当社はホールディングスです。主力事業となっているグループの「日本和装」の事業では、全国で「無料きもの着付教室」を運営しています。教室は、きもの消費者を増やす入口です。当社は、全国のきものや帯のメーカー、和装品全般の総合卸売業者など約40社との間で「販売業務委託契約」を結んでおり、この各契約企業が、教室を通してきもの消費者となった方々に対し、きものや帯を販売する機会を設けます。当社の主な収入源は、各契約企業からの販売仲介手数料、仕立加工請負手数料、納品代行手数料などです。「無料きもの着付教室」を導入したのは当社が最初です。民間テレビ会社が番組を無料で提供し広告出稿企業から広告料を得ているのと似ている事業です。

★修了生は全国に約15万5000人

――「無料きもの着付教室」について、もう少しお願いします。

 【吉田社長】 まず、メディアを使って受講者募集を行います。イメージキャラクターを、現在は真矢みきさんにお願いしています。フリーダイヤル、インターネットでの受付を行い年間約3万人の申込があります。受講者は年間約2万人です。カリキュラムは4ヶ月、全15回です。修了すると自分ひとりで着るのは難しいとされる留袖や二重太鼓といわれる上級の帯むすびまでマスターできるようになっています。この間、生産者と消費者の出会いを設け商品理解の知識向上の場も提供しています。もちろん、修了パーティは全員がきもの姿で、大変に華やかで、修了生のみなさんにたいへん喜んでもらっています。修了生のみなさんへは、そのほかにもいろいろな企画イベントを催し、きものを着る機会を設けています。その修了生がきものの良さを口伝えで広めてくれます。「無料きもの着付教室」はスタートして24年になり、修了生は全国に約15万5000人に達しています。

――社長さまのご出身は福岡県の飯塚市とお聞きしています。「無料きもの着付教室」を始められたきっかけはどのようなことでしたか。

 【吉田社長】 飯塚の出身です。叔父は市長を努め、父は貿易業の会社を営んでいました。日本で初めて冷凍マグロをジェット機で輸出したそうです。小さいころの夢は弁護士になることでしたが、父の姿を見て育ったことで起業家の血が騒いだのでしょう。福岡大学の商学部に進み、在学中に訪問販売のビジネスをスタートしました。気がつくと父と同じ貿易商に足を踏み入れていました。香港、ヨーロッパなどで高級ブランド品を仕入れて日本で販売するという仕事です。その仕事の中で、ヨーロッパの高級ブランドに人は憧れるのに、日本が誇れるものはなんだろうという思いがありました。「きもの」こそが日本の誇れる文化であると思いました。しかし、日本の女性は海外のブランド品には積極的に手を伸ばすのに、なぜ、きものには躊躇するのだろうかと疑問を持ちました。調べると、着かたが分からない、着て行く場所・機会がない、呉服店は敷居が高くて一人で買うのは不安、といったきものに対する問題点がみつかりました。それなら、無料きもの着付教室で着かたや品物の知識を教え、着る機会も提供しようということで始めました。

★鎌倉駅西口近くに商品展示場を兼ねた純和風の会員向けゲストハウスを建設

――きものという「和」の立場から、ビジネスの広がりはお考えですか。

 【吉田社長】 考えています。仲介業のスキームを基本として衣・食・住の分野において、手がけていきたいと思っています。鎌倉駅西口近くに商品展示場を兼ねた純和風の会員向けゲストハウスを建設します。現在のビジネスの拡大と同時に次のビジネスの情報収集の場としての役割もあります。

――業績は好調ですね。

 【吉田社長】 2010年12月期は、イメージキャラクターにタレントの観月ありささんを起用したことにより20歳代および30歳代の着物に対して比較的意識の高い消費者の獲得に成功し、全国規模で開催した「きもの大博覧会」等のイベントおよび「プレミアム倶楽部」と称する優良顧客へのプロモーション企画等を開催。さらに、「教室・セミナー会場・事務所」を一体化する「オールインワン施設」の展開も寄与して、売上は6.1%増の63億1000万円、営業利益32.6%増の5億3600万円、純益81.3%増の3億5600万円の業績でした。当社の決算の特徴は教室の受付募集を春と秋の2回行うため、経費の計上が第1・第3四半期に集中します。対して第2・第4四半期には教室のセミナー(販売機会)の開催により利益が出ることになります。2011年12月期は規模の拡大よりも質の向上を優先した未来への準備期間と位置づけています。東日本大震災の経済面への影響も予想されます。売上は4.9%減の60億円、営業利益6.8%減の5億円、純益29.9%減の2億5000万円、1株利益2777円の見通しです。配当は中間500円、期末1000円の合計年1500円の予定です。当社は「消費者」、「生産者」、「取引先」、「株主」、「社員」の『五方良し』で五者が喜びを共有できることを目標に掲げ取組んでいます。

――ありがとうございました。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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