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白井早由里、日銀・新審議委員、復興国債の「日銀引受」拒否を示唆
震災後、日銀は被災地への現金の供給、金融機関への預金証書等を紛失した人への払戻し要請など比較的迅速に対応していると思われる。また、みずほ銀行が何日間にもわたる決済システム事故を起こしたのに比べ、日銀ネットは機能しているし、大量のオペも実施した。[写真拡大]
【「霞ヶ関発・兜町着」直行便】
震災後、日銀は被災地への現金の供給、金融機関への預金証書等を紛失した人への払戻し要請など比較的迅速に対応していると思われる。また、みずほ銀行が何日間にもわたる決済システム事故を起こしたのに比べ、日銀ネットは機能しているし、大量のオペも実施した。そんな中、4月1日に日銀は「短観」を発表。震災直後のヒヤリングだけに、企業家のマインドは、前回調査に比べれば、若干、景気の現状認識が良くなっているが、しかし先行きは少し悪くなっているという内容だ。また同日、新たな審議委員が任命された。白井早由里(さゆり)氏、47歳、東京都出身。長くIMF(国際通貨基金)に勤務、慶應義塾大学総合政策学部教授を経ての就任。記者会見では、早速、震災復興の問題財源問題を聞かれた。復興国債を政府が発行して日本銀行が直接引受けるという論議についてだ。
復興国債という話は、非常に大きな震災があり皆さんが心を痛めていて、どうしたら早く復旧できるかという観点から出てきた案だと思います。そうした気持ちは、私も十分理解しています。ただ、一つ一つの政策を考える際には、その政策が私達国民にとって長期的にみて良い結果をもたらすのかどうかを常に検討しなければいけないと思います。その上で、中央銀行による国債の引受けについて一般論を申し上げると、例えば、私が専門分野としてきた欧州、とくにEUでは、基本条約でECB(欧州中央銀行)による国債の引受けおよび政府に対する直接的な融資を明確に禁止しています。その他の多くの主要な国々でも、明確に中央銀行による国債引受けを禁じています。このように、ある種の国際的なコンセンサスがあることをまずきちんと踏まえなければいけないと思います。
何故そのようなコンセンサスが国際的にできているのかといえば、その背景には共通の歴史的な認識があることが指摘できます。最初は、中央銀行による国債引受けを認めて、それが良いと思うかもしれません。しかし、そうしたことを一旦導入してしまうと、後に歯止めが効かなくなり、国債の乱発に繋がるかもしれません。そのためにインフレが起きてしまえば、結局国民の皆様が銀行券を安心して使えなくなってしまい、経済活動に色々な歪みをもたらす惧れがあります。一番気を付けなければならないことは、長期的にみた場合に、通貨に対する信認が失われてしまう可能性です。
一度通貨に対する信認が失われると、長期金利に跳ね返ってきます。長期金利が上昇すれば、政府の利払いに大きな負担となって返ってきます。そうしたことがあるからこそ、先程申し上げたようにEUも明確に中央銀行の国債引受けを法律で禁じており、日本でも財政法5条で日本銀行による国債の引受けを禁止しているわけです。したがって、そのようなリスクを十分考慮した上で、日本銀行による引受けといった案が妥当かどうかを考えていく必要があると思っています。
想定していた質問と思えるほど、理路整然と明確に所見を述べており、まずまずのスタートだったが、記者は更に突っ込んで聞く。「財政法では特例の規定があり、特別な事由がある場合は、国会で審議し議決すれば、議決を経た金額の範囲内で国債を引受けできるという定めがある。与党の中では日本銀行が直接国債を引受けることで貨幣の供給量が増えて、お金が市中に増え、結果として物価が上がり、それがデフレ脱却や景気の回復に繋がるという意見もあるが」
そのような意見があることは、理解しています。しかし、私が強調したいことは、短期的な面だけではなく、長期的にその政策が経済および国民の皆様にとって良い結果をもたらすのかを常に考えていかなければいけないということです。特に中央銀行による国債の引受けは、先程申しましたように、ある種の国際的な共通のコンセンサスがあります。中央銀行が国債を引受けることに関しては、明示的に禁止しているという国際的なコンセンサスがある中で、もし日本だけがそのような措置を行った時に、市場の受止め方次第では、取り返しのつかない問題が起きてくると思います。
通貨の信認というのは、私の研究活動を通しても感じていることですが、一度失ってしまうと、なかなか取り戻せません。最近の例においても、ハイパーインフレ、つまり高いインフレを経験した国がありますが、そうした国が通貨の信認を取り戻すのは大変なことです。しかも、わが国の場合は、通貨である円が国際通貨であり、経済規模も世界第3位という国です。こうした国で中央銀行が国債を引き受けるようになると、それが日本の長期金利に跳ね返り、日本の金融資本市場にも影響を与えると思いますし、日本に止まらず国際的な影響があるかもしれません。したがって、そのようなことを十分考えた上で、このような政策について判断していく必要があると思っています。
これは「優等生的」な説明で、記者の質問の答えとしては十分でない。記者は金融理論、通貨理論の枠を超えて、政策的に中央銀行としての役割があるのではないかと、聞いているのだが、確かに就任当日の”新人審議委員”には荷が勝ち過ぎていたかもしれない。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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