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■債務超過でないかが重要なポイント
前回のコラム第1回で、金融機関の融資判断において「企業が提出する決算書の内、直近決算の損益計算書で、まずは単年度でしっかりと利益が出ているかどうかが大切」ということをお伝えしました(前回コラム)。
このこと以上に金融機関は融資判断において「債務超過でないかどうか」を重要視しています。
債務超過とは、貸借対照表上の負債(債務)が資産(財産)を上回っている状態です。つまり、資産の全てが他人の資本(借入金)によってまかなわれていて、しかも仮に全資産を売却してもまだ負債が残るという、経営としてとても苦しい状態を指します。
監査法人による会計監査を受けているような上場企業や大手企業は別として(※)、中小企業の場合、決算書上は債務超過でなくても、貸借対照表を精査すると償却不足などのため実質的に債務超過であることが意外に多いのが現状です。
(※)監査法人による会計監査を受けているような上場企業や大手企業であってもなにがしかの粉飾決算をし、それを監査法人が見つけることができない、あるいは監査法人と企業とが結託して決算書を粉飾することもあるのはよく知られた話です。
■なぜ金融機関は債務超過を嫌うのか
基本的に企業は資金繰りがつけば事業を継続できますので、債務超過だからといって即倒産というわけではありません。しかし、金融機関から見ると、前述のように債務超過とは経営としてとても苦しい状態ですので、資産を元手に事業活動をして利益を生むという企業経営の基本ができていないことになります。そのような会社に対して、さらに融資をするということは金融機関にとってドブにおカネを捨てることと同じです。
景気が良かったころであれば、今は業績がしんどくて実質的な債務超過であったとしても、その内業績が回復し利益を出し、債務超過を解消するだろうと(あるいは、解消して欲しい)ということで敢えて融資を継続する金融機関もありましたが、金融機関同士の競争が厳しくなる中、金融機関自身の生き残りを賭け悠長なことは言っておられなくなりました(一方、金融機関は監督官庁である金融庁の手前、金融面で企業を何とか支援するという苦しい立場でもあります)。
金融機関は融資判断において「債務超過でないかどうか」を重要視しています。
■債務超過の可能性がある企業はどうすればいいのか
半ば意図的に決算を調整し、債務超過でないことも含め財務状況を良く見せることで「自分の会社は大丈夫」と思い込んでいる企業も少なくありません。ですが、債務超過の解消も含め健全な財務体質を目指すには、収益を高める努力をするとともに、自社の実質的な財務状況を直視することが大切です。中小企業の場合、社内に経理担当者はいても会計の専門家と呼べる人材はいないことが多いので、顧問税理士さんに相談し、一度実質的な財務状況を調べてもらいましょう。
もちろん、会社の良くない状況をいきなり決算書に表すことは、資金調達など様々な面で不利益に直結しますので、どのようなタイミングで段階的にでも実質的な決算書としていくかについても顧問税理士さんと相談されることをお勧めします。
■会計の仕組みを改善する企業を金融機関は信用します
粉飾決算とはいかないまでも節税のため中小企業が決算に際し何らかの利益操作をしていることは金融機関も重々承知しています。
しかし一方、会計の仕組みを改善しようとする企業を金融機関は信用します。例えば、信用保証協会は全国信用保証協会連合会作成の「中小企業の会計に関する指針」チェック項目表に該当することを確認できる中小企業については、基本料率から0.1%を割引した料率を適用しています。このことからも分かるように、会計を改善する企業に対し、金融機関は優遇しています。
今回のコラムをまとめると、
(1)金融機関は債務超過でないかどうかを重要視する、ということを企業側が認識する
(2)自社の貸借対照表が債務超過でないかを確認する
(3)債務超過の解消に向け、収益を高める努力をするとともに、会計の仕組みを改善する
ということになります。
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