東レ・「サミア」シリーズ 新たに「サミアリリヤーン」

2010年10月5日 09:31

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記事提供元:日本繊維新聞

 東レ・エクセーヌ事業部はマイクロファイバー使いの織編物「サミア」シリーズの開発・販促に力を入れている。人工スエード「エクセーヌ」用に開発した超極細糸"SAM"を織物やニットに転用。「人と違う物を創る」(田邉充エクセーヌ事業部長)をコンセプトに商品開発と取り組んできた。20年来の蓄積によって生み出された独自の商品群を秋冬の重衣料を中心に年々、販路を広げている。


 東レがマイクロファイバー使いの織編物「サミア」の原型ともいえる商材の販売を開始したのは20年以上も前に遡るという。

 当時は人工スエード「エクセーヌ」の売れ行きが低迷へと転じ「にっちもさっちもいかなくなっていた時期」(田邉事業部長)を迎えていた。

 ここで東レはヨコ糸を「エクセーヌ」と同じ超極細糸・SAMで商品化したスエード調の織物「トレリーナ」や「クレスフィル」を開発し、輸出中心に一定の販売量を確保する。

 このときから、東レはコンセプトに"人と違う物を創る"を掲げ、商品開発を推進。その後、このSAMによる商品群は「サミア」と命名され、大きく進化していくことになる。

 東レによると「サミア」の販売が始まったのは15年以上も前のことという。タテ糸・ポリエステル加工糸/ヨコ糸・SAMで作り込んだ品番の中から1-2品番をアパレルに提案。

 当初はあまり注目されなかったというものの、人工皮革「エクセーヌ」では得られない軽さ、商品バリエーションが評価され、数シーズンでその販売量は本家の衣料用「エクセーヌ」を上回るヒット素材へと成長していく。

 今でこそ、織物による「サミア」を上回る販売規模に成長したニット(ダブルラッセル)ベースの「サミアソフィー」。しかし、東レがニット使いの販売を先行させたのは丸編みベースのインテリア(椅子張り)用素材だった。

 東レはこの素材を「サミアニット」として投入。天皮を主力に各種インテリア製品を展開するイタリア最大の家具メーカーに採用され4-5年前まで世界中に売られてきたという。

 現在、東レは織物ベースの「サミア」、ダブルラッセルベースの「サミアソフィー」を主力に「サミア」シリーズを展開する。

 リーマンショック後の世界同時不況によって09年度はさすがに苦戦を強いられたものの、それ以外は「サミアソフィー」を中心にほぼ一貫して右肩上がりを続けてきたという。

 東レは元々、織布を北陸産地で、染色を岐阜地区で行い、織物をベースとする「サミア」の販売を拡大してきた。

 その後、人と違う物を創り出すため、自社系列にこだわることなく「独自の技術をもったあちこちの産地をラウンドし開発と取り組んできた」(田邉事業部長)。

 例えば、先染めの富士吉田産地で染めてみたり、一宮で複合糸を製造してみたり、コーデュロイやツィード、千鳥格子などをプリントで表現した商品群をラインアップしたり......という開発を通じ年々、商品ラインの拡充を進めてきた。

 10年秋冬では、前シーズンから販売を開始したモールヤーンによる独特の表面感が特徴の「サミアモール」の販売がほぼ倍増規模に拡大。

 「サミアモール」を、今や定番となった「サミア」、主力の「サミアソフィー」に続く第3の柱に育成すべく、11年秋冬に向けた商品ラインの幅出しに力を入れている。

 11年秋冬に向けては、秋物中心だった「サミア」シリーズの販路を初冬あたりまで広げていくため、プレーンな梳毛調の新商品開発を進めており、「サミアリリヤーン」として打ち出す。

 タテ糸をウール、ヨコ糸を「サミア」のリリヤーンで商品化。ウール100%では表現することのできない、ウール、「サミア」それぞれの持ち味を融合させた商品として秋冬の重衣料向けに売り込んでいきたい考えだ。

 今年は10月26日から29日まで「マイクロファイバー素材展」を東京本社で開催。さまざまな産地のノウハウを融合させて商品化した多彩な商品ラインを打ち出す。


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