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社名変更に踏み切った元気寿司の狙いを覗き込む
8月1日、元気寿司が社名を「Genki Global Dining Concepts(9828、東証スタンダード。以下、元気寿司)に変更した。同時に宇都宮市にあった本社機能の大半を東京に移転した。
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元気寿司ではその理由をこう説明している。「事業の多角化を図る。海外市場での拡充を進める」。
それにしても回転ずし業界にあって相応のポジションを有していながら、社名から「寿司」の二文字を外す点には疑問が残る。
回転ずし業界の店舗数のランキングは、こんな具合。1位の「スシロー:642店店舗(24年4月時点)」にはじまり、「2位、はま寿司:570店」「3位、くら寿司:546店」「4位、かっぱ寿司:311店」「5位、元気寿司の主軸/魚ベイ:169店」etc。
事業の多角化、が分からぬでもない。元気寿司グループの親会社は筆頭株主でもある、伸明HD(コメの卸売り事業を展開)。川上事業(生産者支援)/川中事業(食の加工)/川下事業(中食・外食)を展開している。事業の多角化とは親会社の「川中・川下事業」と立ち位置を同じにするということなのか。がこれまで元気寿司は「コメ」の割安かつ潤沢な供給で、回転ずし業界で優位性を享受してきたことは事実。
回転ずし業界に通じた向きは、こう噛み砕く。
「コメで有利な立場に立ってきたことは否定しない。しかしそれだけでは勝ち残っていけない背景がある。経営の原価率の引き下げ競争だ。DX化をどこまで進められるかも大きなポイントだが、それに勝るとも劣らないのがネタの原価率の問題だ。
業界トップのスシローの(どこでもそうだろうが看板ネタ)マグロの原価は60%を超えている。低減値のネタとの組み合わせなどの努力はしているが、それでも原価は50%。元気寿司の社名変更に、そんな状況下での競争激化への懸念があることは否定できない」
国内市場での競争激化⇔収益力低下に対し「コメの川中・川下事業」にシフト・注力し、伸長が認められる(フランチャイズ方式主軸の)海外に「回転ずし」市場は積極策を執る。ちなみに2024年3月期は22店舗出店(12店退店)。海外子会社13店舗と合わせ22店舗体制になっている。売上高は前年同期比10.1%増の86億400万円、同11.5%増のセグメント利益17億6200万円と過去最高になっている。
本稿作成中の時価は4400円台終盤水準。予想税引き後配当利回り1%強。年初来高値ゾーン。社名変更の具体的な方向が見えてくるまで待つのが賢明か。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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