相場展望8月19日号 米国株: パウエルFRB議長の講演に注目、米国株は分岐点にある 日本株: 円高に転換で、日経平均は「2番底」に向かう可能性

2024年8月19日 11:29

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/15、NYダウ+554ドル高、40,563ドル
 2)8/16、NYダウ+96ドル高、40,659ドル

【前回】相場展望8月15日号 米国株: FRBの政策金利引下げは、「9月に▲0.25%の引下げ」と予想 日本株: 6カ月2週間の株価上昇分を、わずか4週間で藻屑と消える ただ今、戻り率46%

●2.米国株:NYダウは8月初めの下落を回復、注目は8/23のFRB議長の講演内容

 1)NYダウは3日間で▲2,139ドル下落したが、8/16に急落前とほぼ同水準に回復
  ・NYダウの推移
    7/31   40,842ドル
    8/05   38,703
    差引  ▲2,139ドル下落
    8/16   40,659
    差引  +1,956ドル上昇

 2)パウエルFRB議長の8/23の講演内容に注目
  ・毎年恒例のジャクソンホール会合があり、FRB議長の講演が8/23にある。ジャクソンホール会合とは、カンザスシティ連銀が主催する年次シンポジウムのこと。
  ・この時の「利下げ」発言の内容次第が、当面の米国株価に影響する。
  ・米国株式相場は、利下げを織り込み済みである。
  ・問題は、利下げの幅に関心が集まっている。
  ・パウエルFRB議長の発言内容が注目されている。
   ・発言内容により、株価反応に違いがでると予想。
    (1)利下げに言及しない場合 ⇒ 株価は失望で下落
    (2)0.25%の利下げ     ⇒ 株価は横ばい
    (3)0.50%の利下げ     ⇒ 株価は好感して上昇
   ・9/6に米国雇用統計が発表される。パウエル議長は雇用統計を意識して、8/23の講演では「利下げをにおわす」程度で、明確な利下げ発言はしないと予想する。
   ・したがって、パウエル議長講演は注目されている分、やや失望感がでると思われる。パウエル議長はいままで言質を取られない慎重な発言を繰り返してきており、今回も同様と見る。

 3)NYダウは分岐点に差し掛かっている
  ・NYダウの最近の高値推移
    7/17   41,198ドル
    7/31   40,842
    8/16   40,659
  ・高値が切り下がっていることに注目したい。
  ・NYダウは、ドル高基調で株価上昇してきた。ところが、そのドル高に変異が生じている。8/1~5にNYダウは下落したが、ドル相場もドル安となっていた。
  ・要因は、米国金利の低下予想にある。米国金利は米国経済を支えるため、低下を模索している。したがって、従来の方程式「ドル高⇒米国株高」から「ドル安」に転じた場合「米国株安」の可能性が増すと思われる。つまり、金利低下で米国株価は分岐点に差し掛かっていると思われる。

●3.米国経済の一部に「黄色信号」、失業率や債務延滞など=シカゴ連銀総裁(ロイターより抜粋

 1)シカゴ連銀のグールズビー総裁は8/16、「失業率の上昇や中小企業の債務不履行(デフォルト)、クレジットカード延滞率の上昇など、米国経済に「黄色信号」が点滅しているものがある」との見方を示した。

 2)グールズビー氏は「労働市場に弱さが表れ始めたら、注意を払う必要があると思う」と指摘した。

 3)信用状況については、現在タイト化しており、米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和に動けば、信用状況が緩和されるとの見解を示した。

●4.米国7月小売売上高は前年同月比+2.7%増、景気急減速の懸念を和らげた(ロイター)

 1)消費者はバーゲン品を探したり、より安価な代替品に乗換えたりすることで、支出を維持している。

●5.米国新規失業保険申請件数は22.7万件、予想23.5万件を下回り、2週連続の減少(ロイター)

 1)大幅利下げ観測が後退。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/15、上海総合+26高、2,877
 2)8/16、上海総合+2高、2,879

●2.中国EC大手アリババ、4~6月期売上高2,434億元、予想2,490億元を下回る(ロイター)

 1)中国の景気低迷に伴う消費者の支出抑制の動きが影響した。
 2)アリババは、ライバルとの厳しい競争にもさらされており、顧客を引き付けるための大幅な値引きや、販売促進策にも迫られている。

●3.中国鉱工業生産、7月は前年比+5.1%予想下回る、3カ月連続で鈍化(ロイター)

 1)伸び率は6月の+5.3%から鈍化。
 2)景気回復を促すため、さらなる政策支援が必要になる可能性がある。
 3)7月の小売売上高は+2.7%増と、6月の+2.0%増から伸びは加速した。予想は+2.6%増だった。消費喚起策が効果を発揮している兆候があるが、経済全般の見通しは依然厳しく、追加刺激策が必要になると指摘している。

●4.中国不動産投資、1~7月は前年比▲10.2%減、販売も▲18.6%減(ロイターより抜粋

 1)1~6月は▲10.1%減だった。政府は不動産部門支援策を相次いで打ち出しているが、目立った回復にはなお不十分な状況だ。
 2)1~7月の新規着工(床面積ベース)は前年比▲23.2%減。
 3)中国の不動産デベロッペーが1~7月に資金調達した資金は▲21.3%減少。

●5.中国7月新築住宅価格、前年比▲4.9%下落、13ヵ月連続で下落、底入れが見えず(ロイターより抜粋

 1)政府の支援策にもかかわらず、不動産部門の底入れや信頼感回復は見えない状況。中国当局は、住宅ローン金利や住宅購入コストの引下げなど、不動産セクターを支援する取り組み強化をしている。

●6.中国、希少金属アンチモン関連品目を9月から輸出規制へ(NHKより抜粋

 1)アンチモンは半導体の材料として使われる希少金属。半導体などの輸出規制を強める米国などを牽制するねらい。
 2)中国政府のこれまでの輸出規制
  ・昨年8月から、半導体の材料などに使われるガリウムとゲルマニウム。
  ・昨年12月から、リチウムイオン電池の材料として使われる黒鉛。

●7.中国の若年(16~24歳、学生を除く)失業率、7月は17.1%に上昇、前月の13.2%から悪化

 1)学生を除く25~29歳の失業率は6.5%、30~59歳の失業率は3.9%。(ロイター)
 2)中国経済は、貿易摩擦や長引く不動産危機、慎重な消費者心理など問題が山積しており、景気低迷は下半期以降も続くと予想されている。経済情勢が厳しい中、採用が引続き手控えられている。

●8.原油先物、約▲2%下落、中国需要増への期待薄らぐ(ロイター)

 1)世界最大の原油輸入国である中国の需要増加への期待が薄らいだことが背景。米国WTI先物が▲1.51ドル安・▲1.9%安の76.65ドル。

●9.中国株、海外資金動向のデータ公表を8/19から停止(ブルームバーグ)

 1)中国本土の株式市場は2024年に初めて年間ベースで外国勢の売り越しに見舞われる可能性があるが、投資家はそれを確認する手立てがなくなる。
 2)約1,225兆円規模の市場を追跡する重要な指標が失われる。グローバルファンドは、中国株を敬遠する理由をさらに見つけそうだ。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/15、日経平均+284円高、36,726円 
 2)8/16、日経平均+1,336円高、38,062円

●2.日本株 : 円安から円高に転換すると、2番底を試しに行く可能性があり、注意

 1)株価急落の要因
  (1)海外勢は8/5の大暴落を前に、3週間かけて先物と現物で▲3.4兆円の大量売り
   ・海外投資家の売り推移  (単位:億円)
                現物    先物    合計
     7月第3週(~7/19) ▲ 2,460 ▲ 5,663 ▲ 8,123
     7月第4週(~7/26) ▲  5,657 ▲1兆0,010 ▲1兆5,669
     7月第5週(~8/02) ▲  5,524 ▲  5,141 ▲1兆0,665
      合計       ▲1兆3,643 ▲2兆0,814 ▲3兆4,457
   ・特に短期海外筋は日経平均の史上最高値7/11後は、利益確定売りで日本株を売り込んでおり、8/2~5の3営業日で日経平均▲7,643円の暴落を仕掛けたといえる。

  (2)短期海外勢が売り転換すると、日本株を買う勢力は(1)個人信用と(2)自社株買いをする事業会社しか残っていなかった。

  (3)証券会社の自己部門も、既に4月第1週(~4/5)から売り方に回っていた。

  (4)8/1から米国株の下落があり、日本株も売られやすい状況にあった。
   ・海外短期筋は円高を促進しながら、同時に日本株を先物・現物で売り仕掛けをした。
   ・証券会社(自己)も大量売りを実施した。
   ・8月第1週(8/5~12)だけで、▲1兆3,097億円の売りおそらく、その大部分は8/5に売り込んだと思われる。

  (5)急落により、信用買いに含み損が膨らみ、大量の「追証」が発生した。
   ・追証による信用買いの解消売りが、売りを呼ぶことになった。
   ・膨らんでいた信用買い残高からの売り解消額は1兆円程度が8/5に集中した。
    ・信用買い残高の推移
     8/2   4兆8,721億円
     8/9   3兆9,634
     差引  ▲ 9,087

  (6)日銀の政策金利引上げも株価暴落にマイナス寄与した。

 2)8/6~16の急騰の要因
  ・株暴落で損が膨らみ「追証」が発生し、信用買い残が解消に迫られ売りが売りを呼ぶ展開となった。このため、将来の売り圧力が投げ売られ激減しため、日経平均は上昇しやすい構図ができた。
  ・円相場も円高⇒円安に転換したのを号砲として、海外短期筋などが日本株を買い仕掛けに転換をした。

 3)日経平均は暴落後、急速に戻しているが、回復は一段落となる可能性がある
  ・日経平均の推移
    7/11   42,224円
    7/31   39,101円
    差引  ▲3,123円下落
    8/05   31,458円  
    差引  7/11比で▲10,766円安・下落率▲25.4%
        7/31比で▲7,643円安
    8/16   38,062円  
    差引  8/5比で+6,604円上昇・戻り率+61.3%

  ・7/11高値に対し8/16は、まだ▲4,162円下回っており、下落率は▲9.85%と「調整ラインと言われる▲10%」近辺に位置している。

  ・戻り率の上限を+64%と見ると、あと+1,266円の上昇余地がある。

  ・8/1・2・5の3日間の下落幅は▲7,643円安に対し、8/6~16は+6,604円反発し、戻り率+86.4%と8月初めの株価はほぼ回復した。

 4)8/16の相場、日経平均は+1,336円と大幅高も、値がさ5銘柄の寄与が+604円
  ・5銘柄の内訳:ファーストリテイ +249円、東エレク +131円、TDK +61円
          アドバンテスト +111円、ソフトバンクG +52円
  ・5銘柄で上昇幅の45.2%を占めるなど片寄りが目立つ。

 5)円相場は、円高⇒円安⇒次は円高?
  ・円相場の推移
         7/11   8/01   8/05   8/16  8/16米国時間
        161.73円  149.85   142.52  148.97   147.60
   7/11 ⇒+19.21円高 ⇒ 8/5 ⇒ ▲6.45円安 8/16 ⇒+1.37円高
  ・「円高=株安」⇒「円安=株高」の流れとなっている。次の流れは「円高」を予感させる8/16米国時間で+1.37円の円高。

 6)2番底に注意
  ・日経平均は暴落後の戻り局面にあるが、戻り一巡後に2番底を試す可能性がある。
  ・円相場も、7/11から8/5にかけて+19.21円の円高に急伸、株価は暴落した。8/6以降は反転して▲6.45円の円安に振れ、日経平均も戻り基調にある。
  ・ただ、8/16で19.21円高の36%に当たる▲6.91円の円安水準に接近してきており、次は円高に反転する可能性を示唆している。
  ・なお、円相場は8/16の日本時間⇒米国時間で+1.37円の「円高」になっている。このため、8/19の日本時間で、円相場が円高に転換しそうである。円高に転じた場合は、「日経平均は2番底を試しにいく」ケースがあり得る。ブラックマンデーでも2番底が到来したように。

●3.GDP4~6月期は年率+3.1%増、2期ぶりプラス、車の生産回復などで(ロイターより抜粋

 1)GDPの過半を占める個人消費は前期比+1.0%増と、5四半期ぶりのプラス。自動車に加え、衣服や外食などが増加に寄与した。個人消費とともに内需の柱となる企業の設備投資も+0.9%増と、2四半期ぶりのプラスとなった。民間住宅は+1.6%増、公共投資は+4.5%増で、いずれも4四半期ぶりプラスとなった。

●4.4~6月期GDPは年率換算で初めて600兆円を突破も実感乏しい(時事通信より抜粋

 1)500兆円を達成してから32年半ぶりに新たな大台に乗せた形だが、物価上昇による「水ぶくれ」の側面が強く、成長の実感は乏しい。

 2)実質GDPは約559兆円で、前年同期の約563兆円を下回る。このため、約608兆円となった名目GDPの伸びに実質成長は追いついていない。

 3)歴史的な円安局面は一服したが、食料品など生活必需品の値上げは続き、家庭の節約志向は根強い。民間シンクタンクなどは、春闘での高水準の賃上げや、政府による電気・ガス代補助再開などを背景に、先行きの7~9月期もプラス成長を維持すると予想するが、個人消費の回復ペースは下押しされる可能性がある。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6273 SMC     業績堅調。
 ・6561 HANATOUR  業績好調。
 ・6594 ニデック   業績好調。

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