東邦ガス、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について PBR向上に向けて「資産効率の向上」と「稼ぐ力の向上」を実施

2024年6月27日 11:29

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記事提供元:ログミーファイナンス

東邦ガス、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について PBR向上に向けて「資産効率の向上」と「稼ぐ力の向上」を実施

東邦ガス、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について PBR向上に向けて「資産効率の向上」と「稼ぐ力の向上」を実施[写真拡大]

PBRに関する現状認識

増田信之氏:東邦ガス株式会社代表取締役社長の増田です。東京証券取引所からの要請を受けた対応として投資家のみなさまから注目されている、PBRの向上に向けた取り組みについてご説明します。

当社のPBRは、以前は1倍を超えて推移していたものの、2021年度からは1倍を下回って推移しています。PBRをROEとPERに分解すると、ROEは概ね5パーセント前後で推移しており、PERは2022年度に7.7倍となったものの、足元では13倍程度となっています。

ROEの分析

当社ではROEをROAと自己資本比率に分解して分析しています。

ROAは概ね3パーセント程度で推移しています。ROAはWACC(資本コスト)を上回っているかが大きなポイントで、 2022年に公表した中期経営計画(2022年度から2025年度)で示している「WACC:2パーセント台半ば」を上回る水準で推移しています。ただし、足元の金利の上昇等によりWACCは当時よりも上昇傾向にあると認識しています。

自己資本比率については、営業キャッシュ・フローの範囲内で投資や株主還元を行ってきた一方、負債の返済を進め、2016年度以降は60パーセントに近い水準で推移しています。

PERの分析

当社のPERは、以前は20倍程度で推移していましたが、外部環境の変化やインデックス(MSCI)からの除外などにより、2020年度から2022年度にかけて大きく低下しています。

電力調達環境の変化やカーボンニュートラルの進展といった新たなリスクへの対応を含め、当社の成長性に対する十分な理解を得られておらず、不安を払拭できていないことが、足元のPERの水準につながっている可能性があると考えています。

PBRの向上に向けた取り組み

これまでの分析を踏まえ、PBRの向上に向けて「資産効率の向上」「適切な資本構成」「PERの向上」の3つの視点で取り組むべき課題を抽出し、それぞれの課題について対応方針を整理しました。

資産効率の向上

「収益性向上の加速」については、2022年に公表したグループビジョンでは「2030年代半ばに事業規模を足元から1.5倍以上にする」との目標を掲げており、この目標達成に向けた取り組みを加速します。

2024年度の連結経常利益は270億円、一過性の要因を除いた実力利益ベースで250億円程度を見込んでいます。

これは、ビジョン達成への第一ステップである現行の中期経営計画(2022年度から2025年度)で掲げた2025年度の連結経常利益250億円の目標の1年前倒しでの達成となるものの、資本市場からの期待やWACCの上昇などを踏まえれば、まだまだ十分ではないと認識しています。ビジョン達成に向けた第二ステップに速やかに移行します。

2030年代半ばの事業ポートフォリオイメージ

「コア事業」の都市ガス事業については、顧客基盤の維持や拡大と徹底した効率化を進めます。LPG事業については、M&Aも活用しながら、お客さま数の増加による安定的な成長を目指します。

「戦略事業」については、「電気事業の収益化」 「東邦ガスくらし・ビジネスサポートの拡充」 「国内外のグループ会社・新規事業の成長」 「カーボンニュートラル対応の加速」といった領域に経営資源を重点配分し、収益化につなげます。

「事業別の収益性管理」については、2024年度から社内で「ROIC」による事業別の収益性管理を導入し、資産効率の向上に向けた取り組みを進めます。

「資産の圧縮・有効活用」については、戦略事業への投資を進める一方、「資産の圧縮・有効活用」にも取り組みます。まず、政策保有株式については、今後数年かけて保有意義の薄れたものを中心に、評価額ベースで三分の一程度の売却を進めます。また、保有不動産については、有効活用による収益化や売却による資産の圧縮を進めます。

適切な資本構成

「自己資本の水準」については、ガス事業者の使命である安全・安心、安定供給の確保の必要性を踏まえ、大規模地震などの自然災害や、原料調達への地政学リスク等を考慮し、現状の事業ポートフォリオにおいて3,500から4,000億円程度を目安と整理しました。今後数年かけて、着実に自己資本の最適化に向けた取り組みを行います。

「株主還元」について、当社の基本的な株主還元方針は「安定配当に加えて、機動的な自己株取得・消却を合わせて、中長期的に連結当期純利益の4~5割を目安に還元」することですが、今回はこれに加え、自己資本の最適化に向け当面の期間、追加の株主還元を実施していくこととしました。

足元の株主還元として、2024年3月に「自己株式の取得」を公表しています。当社としては過去最大となる上限400万株(100億円)を取得上限とし、取得期間は2024年4月1日から9月30日を予定しています。なお、今回の自己株取得は、2022年度までの中長期の利益の状況などを勘案して行っています。

また、配当については2024年4月に「増配」を公表しており、2024年度の配当金は通期で1株につき80円を予定しています。

PERの向上については、カーボンニュートラルへの対応など、みなさまの関心の高い事項について決算説明資料で取り上げるなど、情報開示の充実により当社の成長性についての理解を促進し、取り巻くリスクについての不安払拭に努めます。

今後は、ここまで述べてきた対応策を着実に実行することにより、資本市場の皆様から評価いただけるよう尽力します。

〈参考〉東邦ガスの株主優待制度について

当社は株主優待制度を導入しており、2024年3月期より株主優待制度を「拡充」しています。

株主さまには安心して長く株式を保有いただきたいという思いから、株数と期間に応じて、株主優待ポイントを進呈するポイント制としています。

2024年3月期より適用される制度拡充では、株主優待ポイントの保有期間に 「5年以上」の区分を新たに設けるとともに、当社会員サイト内でのポイント交換倍率を1.3倍から1.5倍に拡大しました。

株主優待ポイントを利用する際は、「カタログ商品との交換」「ガス・電気料金の支払いに充当」「社会貢献団体への寄付」の中から、お好きなものをお選びいただけます。

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