NYの視点:銀行勢の国債保有増加についての諸問題

2024年6月24日 07:39

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記事提供元:フィスコ

*07:39JST NYの視点:銀行勢の国債保有増加についての諸問題
報道によると、財務省の債務管理研究会は6月21日、発行年限の長期化戦略を見直し、銀行勢の有を促すことなどを盛り込んだ提言をまとめ、財務省が発表した。2025年度計画で発行年限の短期化を実現すれば、2020年度以来、5年ぶりとなる。日本銀行による異次元緩和前は銀行の保有比率が4割を超えていたが、日銀が累次元の金融緩和に踏み切った2013年以降、銀行の国債保有残高は漸減した。国の平均発行年限が2024年に8年7カ月となる見込みなのに対し、国内3メガバンクの保有年限は、最長でも2年程度にとどまる。

有識者らは今回の提言で、銀行による国債保有を増やす手段として「市中に供給する金利リスク量の軽減を図る対応が必要」と指摘し、国債償還までの期間が長い国債を購入しづらい事情を考慮した発行計画の策定を求めた。一部試算によると、約600兆円に迫る日銀の国債保有量は異次元緩和前から大幅に増加しており、預金取扱金融機関による購入余地は日銀保有の3割前後にとどまるとの民間試算もある。なお、日銀は2024年3月期決算で、保有する国債の評価損が3月末時点で9兆4337億円に上ったと明らかにした。2023年7月以降の金融緩和策の修正で長期金利が上昇し、国債の市場価格が購入時の価格(簿価)を下回った。評価損は期末として2年連続で、前年の1571億円から大きく拡大し、過去最大となった。今回の決算には足元の金利上昇は反映されていないため、評価損はさらに膨張する懸念もある。民間の金融機関が国債保有を大幅に増やすことはリスク管理の観点から容易ではなく、平均発行年限の長期化も同じような理由で難しいとされる。《CS》

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