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ヒッグス粒子の存在を予言したピーター・ヒッグス博士が死去
信じがたいことだが、宇宙が誕生したばかりのころ、実は質量は存在しなかった。つまり、すべての物質が光速で移動していたのだ。物質の移動を妨げる作用をする素粒子がある時点でこの宇宙で機能するようになり、その瞬間から物質には質量が付与されたのだ。
このような突拍子もない考えを思いついた偉人が、ピーター・ヒッグス博士だ。そのヒッグス博士、4月8日に94歳でこの世を去ったことが、英国エジンバラ大学から9日に公表された。
ヒッグス粒子は「神の粒子」とも呼ばれ、物質の移動を妨げる働きをする素粒子だが、1964年のヒッグス博士の予言から、実際に発見されるまでに48年もかかった。これを受け、彼の理論の正しさが証明されたため、発見の翌年となる2013年に、ヒッグス博士はノーベル物理学賞を受賞している。
ヒッグス粒子が作用して物質に質量を生じさせる場をヒッグス場と呼ぶが、我々も体感している重さが存在する世界は、ヒッグス場である。誕生直後の宇宙は非常に高温で、すべての素粒子が光速で動き回ることができた。だが宇宙の温度が低下し、ヒッグス場に自発的対称性の破れが生じ、ヒッグス粒子が物質に質量を生じさせる機能を発揮し始めたと考えられている。
ヒッグスの理論は「何もない」ところから宇宙が誕生したとする、ビッグバン宇宙論の正しさを証明するために必須の存在だ。「何もない」=「質量もない」というところが宇宙の出発点でなければつじつまが合わないことは、素人でもなんとなく理解ができる。
この宇宙にはヒッグス粒子が無数に存在して、物質の移動を邪魔しているが、その大きさは非常に小さく、人類には簡単には姿を見せてくれなかったために、発見には多大な時間がかかってしまった。
ヒッグス粒子は発見されてまだ12年足らずで、名前は聞いたことがあるが、それがなんであるのか知らない人が大半だろう。それに引き換えビッグバン理論がどんなものなのかを知らない人は、皆無に近い。だがヒッグス粒子なくしてビッグバン理論は語れないことも認識しておこう。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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