超低周波重力波の謎、パルサータイミングアレイから解明へ 英バーミンガム大

2021年10月20日 16:21

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 パルサータイミングアレイ(Pulsar timing array, PTA) とは、自転周期が非常に短い(1ミリ秒から10ミリ秒の間)ミリ秒パルサー群からの電波を同期観測することによって、重力波の検出を行う手法である。

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 パルサーから発せられた電波が宇宙空間を進んでいく際に、重力波の影響を受けると周波数に変化が生じる。その変化の度合いは、パルサー、地球、重力波の発生源との位置関係によって定量的に決まる。パルサーは宇宙空間のあらゆる場所にあり、未知の重力波源を探索するためには格好の存在となっている。

 バーミンガム大学は、重力波の中でも極端に波長が長い(周波数が100ナノヘルツ未満)ものを検出し、その発生源について謎の解明に挑んでいる。超低周波の重力波を発する要因候補については、銀河の中心にある巨大なブラックホールが、銀河どうしの衝突によって連星系のような形態をとったことなどがあげらる。また全く別の視点から、ビッグバン直後の宇宙空間から発せられた可能性も示唆されている。

 パルサータイミングアレイを用いた重力波源の探索は、まだ発展途上の段階にある。多数のデータが集積され、重力波源に関する法則性が見いだされていくのは、これから数年以上先のことになると考えられている。だが宇宙に存在しているミリ波パルサーの数を考えれば、これから蓄積されていくことが期待されている重力波源に関する情報は、膨大な数に上ることだろう。

 この研究が成就するころには、宇宙誕生の初期にどの様な現象が起こっていたのかや、銀河がどの様なプロセスを経て進化してきたのかといった謎の解明が、様々な周波数の重力波源解析によって、進んでゆくことだろう。銀河系どころか太陽系の天体の進化についてもまだまだ解明されていない謎は多いが、138億年前に誕生した壮大な宇宙の進化の謎についても、我々人類は貪欲に解明をし続けているのだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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