新型コロナ対策で疑問視される緊急事態宣言の実効性、野戦病院構想の方が期待できるか

2021年8月20日 08:39

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 17日、政府は新型コロナ対策の緊急事態宣言に、7府県を追加して合計13都府県とし、まん延防止等重点措置には10県を追加して合計16道県とすることを決めた。

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 緊急事態とまん延防止の対象先は合わせて29都道府県となり、全国47都道府県の過半以上が深刻な状態にあることを印象付けた。

 問題は、伝家の宝刀である筈の緊急事態宣言等が、余りに頻繁に抜き放たれるため、実効性を疑問視する向きが多いことだろう。

 昨年1回目の緊急事態宣言発令時には、小中学校の臨時休校という驚きの決定も重なり、人流の抑制効果があったことは間違いない。何ら強制力を伴わない「協力の呼び掛け」に対して、多くの国民が従ったことは、国際的にも注目を集めた。

 ところが、どんなご馳走でも食べ続けると有難味が無くなるのと同様に、2回目以降の宣言効果は回数を重ねるごとに低下している。
 
 今回の主な感染防止対策は、飲食店の酒類提供停止と営業時間の短縮、大規模商業施設やデパ地下での入場制限、混雑地域への外出抑制とテレワークの強化だ。

 何度も対象にされてきた飲食店の酒類提供停止では、もともと店舗の経費を賄いきれない協力金が、支給遅延という事態に見舞われて来たことへの反発や、既に体力の消耗が激しく店舗経営自体が限界にあるなどの止むに止まれぬ事情により、通常営業への復帰を語る店が増加しつつあるようだ。

 専門家と称される先生方の警句も、毎回同じようなフレーズの繰り返しで、国民への訴求力を失っている。
 新型コロナの感染者数と死者数が欧米諸国との比較でけた違いに少なく、ジャパニーズミステリーの様相が漂っていた日本でも、デルタ株の拡大により前日・前週・前月対比で感染が増加しているとマスコミが報じている。日本国内だけを見ていればあながち間違いではないが、感染者が毎日2万人で死者が同20人程度だ。

 人口が日本の半分程度で6600万人の英国では、毎日2~3万人の感染者と100人程度の死者が報告されている。人口比で換算すると、日本の倍の感染者と10倍の死者が発生している計算だ。

 その英国では7月19日から、ほとんどの制限が撤廃されている。国内では賛成論と反対論が激しく対立しているようだが、胆力に勝るジョンソン首相の決定で実施された制限の撤廃後は、感染者数も死者数も落ち着いているようにすら見える。

 彼我の差を比べると、日本のマスコミの浮足立った煽り具合が異様である。

 日本の最大の問題は、医療提供体制が脆弱なことだ。日本医師会の会員数で圧倒的な勢力を占める民間病院の動きが鈍かったからだ。16日のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」に出演した東京都医師会の尾崎治夫会長は、「厚労省が動いていない」と責任転嫁とも取れる発言をしていた。だが国難とも言える状態に対する認識があれば、民間病院に指揮監督権を持たない厚労省の動きを待つよりは、積極的に提言や具申をするべきではないか。

 日本医師会の中川俊男会長も5月12日の会見で「今後感染が増加するようなら、全都道府県を対象にした緊急事態宣言に躊躇するな」と頓珍漢な発言している。仮にも医師であれば、新型コロナへの感染対策が「家に閉じ籠れ!」では済まない筈だと思っていたら、18日の記者会見で中等症患者を対象にした臨時の医療施設(所謂野戦病院)の設置を提案した。

 会長が提案することに、地域の民間病院の医師や看護師が無関心を装うことは出来ないだろう。このままでは鬼っ子になりかねなかった医師会の本気度を注視したい。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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