小惑星ベンヌのサンプル採取したNASAの宇宙探査機、地球に向けて出発

2021年5月12日 16:32

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小惑星ベンヌ (c) NASA

小惑星ベンヌ (c) NASA[写真拡大]

 NASAは11日、宇宙探査機オサイリス・レックスが、小惑星ベンヌから地球への帰路につくための7分間のメインエンジン噴射を、10日に実施したと発表した。小惑星ベンヌは地球の近傍を周回する小惑星で、直径はわずか560mしかない。だが2169年から2199年までの間に8回、地球に接近することが予測され、確率0.07%で地球への衝突の可能性も示唆されている。

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 余談ながらベンヌは球形ではなくまるでそろばん玉のような形状をしているため、不規則な軌道をとる可能性もあり、地球への衝突の可能性をさらに正確に見極めるためには、長期間の挙動の観測が必要とされている。また衝突確率の0.07%という数字は、他の地球への衝突の可能性がある天体と比べれば破格に高いものだ。

 オサイリス・レックスは今後、太陽を2回周回した後、2023年9月24日に地球に到着する予定で、ベンヌで採取したサンプルの入ったカプセルは、ユタ州の西砂漠にあるユタテストアンドトレーニングレンジにパラシュートで降下することになっている。

 だがそこまでの道のりには、まだまだたくさんの難関が待ち構えている。なぜならば広大な宇宙空間を移動中の、ほんの3メートル前後の小さな探査機の位置と速度を正確にとらえ続け、的確な航路を選定しながら無線操縦により航行させる必要があるからだ。

 このミッションの最重要課題であるサンプル採取はすでに完了しているため、現在のNASAの最重要課題は、探査機を地球に接近させ、サンプルの入ったカプセルを切り離して無事地球に送り届けることに移行した。もしも万が一見失うようなことがあれば、足掛け5年越しのプロジェクトが台無しになってしまうため、NASAの技術陣たちにとっては、今後も気が抜けない日々が続くことだろう。

 そしてNASAの技術陣が最も緊張するのは、探査機から切り離されたカプセルが大気圏に突入するときである。進入角度を誤ればサンプルの入ったカプセルは熱で焼損してしまう。

 オサイリス・レックスはカプセルを地球に送り届けた後も、お役御免とはいかないようだ。というのもまだ十分な燃料が残っているため、次の目標となる小惑星に向けて第2の旅に出ることも、この夏、可能性の検討が予定されているからだ。

 たった3メートルほどの小さな機体ではあるが、オサイリス・レックスはまだまだ太陽系誕生のなぞの解明という重大な任務を背負い宇宙の旅を続けるのだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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