ニプロ、医療現場のニーズを踏まえた製品開発により成長を目指す

2020年6月15日 07:05

印刷

東京CPF(画像: ニプロの発表資料より)

東京CPF(画像: ニプロの発表資料より)[写真拡大]

 ニプロは6月5日、再生医療製品などの製造や研究開発を行う施設「東京CPF」を竣工したと発表した。

【こちらも】花王、利益ある成長により8期連続最高益更新と31期連続増配に挑む

 東京CPF(Cell Processinng Facility、細胞培養施設)では、患者から採取した脊髄液中の間葉系幹細胞を体外で培養・増殖し、再生医療製品などの研究・製造を行う。

 ニプロは1947年、佐野實が滋賀県大津市で電球再生事業を興したのが始まりである。1950年、電球製作を開始、1963年には魔法瓶用硝子販売とスーパーマーケット事業へ進出した。1965年、製薬会社向け輸液セットの販売を開始、1969年に注射針の生産開始、1973年に医療機器の国内販売を開始し、医療分野への本格進出を果たした。

 2001年、日本(Nippon)と製品(Products)を組み合わせて世界に通用する日本製品を作りたいという思いから、社名を現在のニプロへ改称した。

 2020年3月期の売上高は4,425億円。事業別の構成比は、国内で注射・輸液、人工臓器、高機能、透析関連の医療機器と糖尿病、ジェネリック、キット製剤関連の医薬品の製造販売、海外では医療機器を扱う医療関連事業が75.9%を占める。以下、医薬会社からの医薬品の受託販売、注射剤、経口剤、キット製剤を製造販売する医薬関連事業が15.9%、国内で医療用硝子、魔法瓶硝子、キット製剤容器を製造販売し、海外では医療用硝子の製造販売を行うファーマパッケージング事業が8.2%を占めるニプロの動きを見ていこう。

■前期(2020年3月期)実績と今期見通し
 前期実績は、売上高4,425億円(前年比3.8%増)、営業利益は前年よりも26億円増の264億円(同10.9%増)、純損益は前年よりも244億円減の123億円の赤字となった。

 営業利益増加の事業別要因は、顧客企業のニーズに対応した製造受託、開発受託の推進、前年4月の田辺製薬吉城工場の全株取得などで医薬関連が25億円、高付加価値製品の販売強化によりファーマパッケージングが1億円、外部への売上増により未実現利益調整額が減少した全社調整が6億円の増益となった。

 一方、薬価改定と新型コロナウイルスの影響で、医療関連が5億円の減益であった。

 純損益減少の要因は、新型コロナウイルスの影響による株式市況悪化により、投資有価証券評価損299億円、のれんと固定資産減損損失56億円の計上であった。

 今期は、売上高4700億円(同6.2%増)、営業利益265億円(同0.3%増)、純利益135億円(対前年258億円増)を見込んでいる。

■中期経営計画(2021年3月期~2025年3月期)による推進戦略
 2030年に売上高1兆円を見据えて、医療現場ニーズの流れを踏まえた先進的な製品開発により、2025年3月期まで売上高成長年平均7%以上、営業利益率9%以上を目指して次の戦略を推進する。

●1.医療関連事業
 ・人工腎臓などの商品陣充実、代理店との共闘による新規販路開拓。
 ・オンライン診療システムの提案などで地域医療No1への挑戦。
 ・海外では透析事業強化、自社販売網の拡大と研修センターの拡充。
 ・再生医療では医療機関との連携、製造体制強化。

●2.医薬関連事業
 ・製造受託部門の生産、品質保証体制整備と生産能力増強。
 ・製造の自動化推進、欧米市場への拡大により細胞医薬品事業の強化。

●3.ファーマパッケージング事業
 ・バイオ医薬品など高品質容器への対応、グローバル市場への安定供給体制の整備。

 「医療機器」「医薬品」「ファーマパッケージング」の三位一体で、グローバル展開を目指すニプロの動きに注目したい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事