タクシーの定期券サービスが始まる 高齢ドライバーの免許返納を後押し!

2018年5月17日 18:29

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 12日の日本経済新聞は、JTBがタクシーの「定期券サービス」を始めることを伝えている。このサービスは70歳以上の高齢者を対象として、タクシー利用が比較的低調な日中の時間帯に限定し、乗車の数十分前に予約したうえで、あらかじめ指定した2~3地点(病院・スーパー・駅などが想定される)と自宅を往復できる。利用は何度でも可能で、料金は1カ月2万円程度になる。今年の夏から長野県諏訪市でサービスを開始し、使い心地や問題点を確認しながら、順次全国へと広げる。

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 利用施設が狭い範囲に集中している都市部と、移動距離が長い地方を一律にできないという現実分析から、利用料金は地域によって格差が生じる。そうした場合でも、自家用車に必要な燃料費や車検代等の維持費、駐車料金を勘案して、自家用車と同程度か、より少ない負担になることを目指す。

 利用者の立場から見ると、高齢になって運動機能の低下を自覚し、子ども達からは“一方的な免許証の返納”を勧められて憤慨する例が少なくない。足腰が弱った高齢者だからこそ、クルマの有難味を実感しているのに、代案なしにクルマを取り上げようとする風潮に疑問を持つ向きは多い。もちろん、高齢者の事故が増加しているのは事実であり、自分が加害者になるかも知れないという漠然とした不安はある。食べることは生きる基本であり、定期的なスーパー通いは欠かせない。持病があれば病院通いは、切実な問題である。

 タクシー会社の立場から見ると、反転する兆しのない乗客の長期低落傾向に有効策を打ち出せていない現状がある。昨年8月には「運賃を乗車前に決める仕組み」を導入するため、客がスマホに取り込んだ配車アプリを使って、乗車前に迎車料金を加算した利用金額が表示される実証実験を行った。タクシー料金への安心感をアピールする目論見だ。また、「相乗りタクシー」の実証実験も行われているが、業界の期待を担うような実績には至っていない。

 サービスを提供する側と、利用する側双方がはまっていた袋小路に、JTBが風穴を開けた。目的地をあらかじめ決めることで、旅行業法上の「募集型企画旅行」となり、JTBが乗り放題の旅行商品として販売するという、素晴らしいアイデアである。高齢者の事故に怯える家族が減少し、経済活動が維持される社会が、JTBという一企業の斬新な発想から始まる。こんな例は、他にもあるのではないだろうか?(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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