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飛べない翼 三菱重工業のMRJ 完成を待たずにキャンセル発生も?
MRJ飛行試験機2号機が離陸する様子。(写真: 三菱航空機の発表資料より)[写真拡大]
2008年に開発を開始し、2013年の後半にはANAに初号機を引き渡す予定でいたMRJは、都合5回の延期に追い込まれた挙句、完成機納入時期を2020年半ばへと延長し、当初計画から7年も遅れることになった。
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第1号の顧客として25機を購入する予定でいたANAは当てが外れて、MRJの運航を予定していた地方都市間の路線に、代替機のボーイング「B737-800」4機をリースで調達して2018年度から投入する。32機を契約している日本航空(JAL)に今のところ表立った動きはない。ANA・JALにとって三菱重工業は身近な日本企業であるために、忖度しなければならないことが多く、ビジネスライクに動きにくい面があるのだろう。三菱重工業にとっては有り難いことである。
40機(購入権含む)の購入契約をしていた米イースタンが経営危機に陥り今年6月、米スウィフト航空に買収された。そのスウィフト航空は新規航空機計画について「近い将来、ボーイング737が13機から18機程度増える」ことを明らかにした。契約しているMRJの40機について触れていない。これは何を意味するのか?
米航空会社向けの受注契約の内訳は、スカイウエスト航空が200機、トランス・ステイツ航空が100機、スウィフト(イースタン)航空が40機、航空機リース会社のエアロリースが20機となっている。米国での受注は計360機であるが、キャンセルが可能なオプション契約が半分近くを占めている。しかも現在、契約が履行出来ない理由が三菱側にあるため、最悪の場合には全てがキャンセルになることも想定されないわけではない。
MRJを200機、購入契約している米スカイウエスト航空が、カナダのボンバルディア社と航空機整備の10年間の延長契約を結んだことが、「ボンバルディア社に変更する布石を打った」と伝えている米業界誌もある。
アイーダ・クルーズ向け大型客船2隻の造船ビジネスでは、1番船は当初予定の2015年3月から1年遅れて引き渡され、2番船も2016年3月の引き渡し予定が2017年4月にやっと引き渡された。2隻で1,000億円と見られる受注額に対して累計損失は2,375億円に膨れ上がり、受注額の2倍を超えた。
開発費用を1,800億円程度に収めた上で、1,000機規模の受注を受けて初めて採算の目安といわれたMRJの事業が、開発費用が5,000億円を超え受注が数100機に終われば、豪華客船の建造で被った以上の痛手を受けることは必至である。飛べない翼はいつになったら大空へはばたくのか?余りにも重大な舞台に、三菱重工業は立たされている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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