92歳の二枚貝から気候変動の歴史を探る、東京大学の研究

2017年11月28日 21:29

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ビノスガイ。(写真:東京大学発表資料より)

ビノスガイ。(写真:東京大学発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の研究グループが、92年生きている二枚貝の一種ビノスガイから、過去の気候変動の歴史を分析する手法を確立することに成功した。

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 ビノスガイは、東北以北の海に住む二枚貝の一種である。食用にもなるが、あまり美味ではないため人気はない。ただ、どうやらかなり長命の種であるらしく、近年岩手県大槌町で採取されたビノスガイの一個体が、2011年の東北地方太平洋沖地震や、1960年のチリ津波などを経験している、92歳という長寿の個体であることが分かった。

 海洋の気候を研究することは重要であるが、陸地に比べてかなり研究は難しく、科学的な観測データはどう遡っても19世紀の中頃が限度であり、広域の観測データともなれば1950年以降のものしかない。

 一つの問題は、海洋の環境を分析するにあたって、例えば樹木における年輪のような、確立された指標が存在しないということである。

 しかし今回、東京大学の研究グループは、その貝が一年間にどれだけ成長したかの記録が、貝殻に「年輪」のような形で残されており、その情報をもとに、海洋の環境変動までもが分析可能であるということを突き止めた。

 といっても、貝殻の年輪は、肉眼で見て観察できるようなものではない。まず、貝殻を切断し、切断面を研磨し、顕微鏡で観察する。そうすると、貝殻の断面に、周期的な縞模様を見てとることができるのである。

 これが、本当に「年輪」のように経年の変化を表すものであるのかどうかについては、放射性炭素、化学的分析など、様々な角度からの検証が行われたが、結論としては、年輪として扱いうるものと見て間違いはないという。

 なお、研究の詳細は、Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecologyに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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