東京都、水素社会を推進 燃料電池車への追い風なるか

2017年11月8日 06:53

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小型パッケージユニットを用いたキッソ長坂工場水素ステーションのイメージ(画像: キッソの発表資料より)

小型パッケージユニットを用いたキッソ長坂工場水素ステーションのイメージ(画像: キッソの発表資料より)[写真拡大]

 東京都は1日、水素エネルギーの普及を図るため、産学官連携の「Tokyoスイソ推進チーム」の発足を発表した。一方、キッツは10月25日、小型な水素ステーションを開発・実証すると発表した。

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 CO2や排ガスを排出しない燃料電池車(FCV)は、究極のエコカーといわれる。同じく、電気自動車(EV)も走行中にCO2を排出しないが、電気をつくる火力発電などでは多くのCO2を排出する。太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーだけでは、電気の需要を賄いきれない現状において、FCVが環境性能に優れる。

 このように環境性能に優れ、かつガソリン車並みの航続距離と燃料補給時間を併せ持つFCVは、大型バスやトラックにも最適という。ところが、世の中の流れはEVへ向かっているようだ。

 FCVの最大の課題は、水素ステーションの不足といわれる。水素ステーションの設置費用は高額であり、全国で99カ所に留まり、EVの急速充電器の約7,000カ所に遠く及ばない。当然、EVとFCVを棲み分ける方が妥当との主張もある。このような状況の中で、東京都の水素エネルギーの普及チーム発足やキッツの小型で安価な水素ステーションの開発は、FCVの追い風になる可能性を秘める。

●東京都の掲げる水素エネルギー社会

 環境政策と経済波及効果の二面性を持ち、産官学の111団体が参加する。

 環境政策面では、水素エネルギーが利用段階でCO2を一切排出しないことに触れながら、再生可能エネルギーの電力で水を分解して大量に水素を製造するシステムが実用化されれば、低炭素社会の切り札になるとしている。

 経済波及効果面では、日本の高い技術力が集約され、産業分野の裾野も広いことから、高い経済波及効果が期待できる。加えて、災害時の非常用電源としての活用も可能で、災害に強い街づくりに貢献するという。

 なお、詳細は「Tokyoスイソ推進ポータルサイト」に公表されている。

●東京都の目標

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックでの活用に向けた環境整備として、普及初期である2020年までと2020年以降の普及拡大期を見据えた政策目標を定めている。

 ・水素ステーションの整備:20年35カ所、25年80カ所、30年150カ所
 ・燃料電池自動車・バスの普及:20年6千台、25年10万台、30年20万台

●キッツの自家用小型水素ステーション

 キッツは水素ステーション用のバブルの大手である。小型水素ステーションの開発は、現在のFCV普及台数から、市場規模に適した水素ステーションの建設が必須としてのもの。FCVの社用車とフォークリフトで運用・実証する計画だ。

 規模は1時間にFCV2台を満タンにする小型であるが、安価な水素ステーションを市場へ提案することも視野に入れている。なお、竣工は来年3月の予定という。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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