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熊本地震論文の地震計データに改ざんの疑い
masakun曰く、 去年4月に起きた熊本地震の論文「Preliminary Analysis of Strong Ground Motions in the Heavily Damaged Zone in Mashiki Town, Kumamoto, Japan, during the Mainshock of the 2016 Kumamoto Earthquake (Mw 7.0) Observed by a Dense Seismic Array」に掲載されたデータに改ざんの疑いがあることが分かり、共著者が論文を取り下げると発表するなど騒ぎになっている(MBS毎日放送)。
論文では益城町に臨時で設置された地震計3か所の記録が掲載されているが、このデータが改ざんされて使われた可能性があるようだ。
論文の共著者である京都大学防災研究所の後藤准教授による「益城町本震記録に関するお詫びによると、益城町にて観測されたとするデータに関する資料(PDF)が匿名で提供されたという。この資料では、論文に掲載されているデータと防災科研が設置した「KiK-net(基盤強震観測網)益城(KMMH16)」のデータを相関分析したところ、ほぼ一致したということが示されている。後藤准教授は「提供された資料に記載の事実に誤りがないこと、すなわちデータに重要な問題があることを確認いたしました」としている。
別の共著者である産総研の吉見研究員も「早い段階で、初期微動部分について、高周波数成分が少ないように感じていた等、根本的検討をする時間は十分にあったにも関わらず、疑問点を検証しないままとしてしまった」と陳謝、問題のデータの公開を中止した(「2016年熊本地震の益城町臨時観測点における本震記録について」)。主筆者である大阪大学の秦吉弥准教授については大学が事情を聴いているという。
この問題については一時土木学会地震工学委員会のWebサイトにも情報が掲載されていたが、その後内容が修正されている(土木学会地震工学委員会「熊本地震本震の臨時観測公開データの問題について」、修正前記事のWebArchive)。京都大学の澤田純男教授によると、「公開データがその時点でも進行形で研究等に使われていることを鑑み、一刻も早く皆様にお知らせすることが重要であると考え、土木学会の了承を得ることなく、澤田だけの判断で地震工学委員会のホームページに掲載した(京都大学防災研究所地震災害研究部門Webサイトに掲載された澤田教授による報告)とのこと。
実際、このデータをもとに益城町でこれまででは考えられないような強い揺れが生じていたとして、揺れを増幅させる「表層地盤」のメカニズムが広く報じられていた(たとえばNHKによる「熊本地震が浮き彫りにした「表層地盤」というリスク | NスペPlus」など。すでに記事は削除済み)
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