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トヨタが「自動運転白書」を公表したワケ TVドラマ「リーダーズ」が原点?
トヨタ自動車は9月27日、「自動運転白書~トヨタにおける自動運転への取り組み ― ビジョン、戦略、開発」を公表した。資料は25ページにもわたるものだ。
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そこには、企業としてただ利益を優先するということではなく、自動運転技術を通して、社会とともに持続的に成長することを基本としたビジョン・理念が描かれている。それが、企業の社会的責任である。「自動運転」というと先進的な技術ではあるが、明るい未来的なイメージだけで踊ってしまうのは現実的ではない。客観的に、自動運転とは社会とどう関わり合いがあるのかを冷静に見極めようとしているのがうかがえる。
「もっといいクルマつくろうよ」と真面目すぎるスローガンではあるが、それがこの白書にもにじみ出ており、企業として決してブレない、一貫した主義主張が見える。真面目でいいのである。
もう1つ、昨今の欧米化のせいで企業経営者の中には、ステークホルダーのうち株主だけを優先するような言動が見られるが、すべてに公正なスタンスでいることにブランドの重さを感じるこの頃である。トヨタを題材にしたTVドラマ『LEADERS リーダーズ』を思い出してみよう。
■重要なのは「安全性」
クルマというものは社会にさまざまな恩恵をもたらしているが、一方で、交通事故を起こして世界では毎年百数十万人もの命を奪っている。トヨタはすでに、1990年代から「交通事故死傷者ゼロ」を目指しているが、自動運転技術もその目標を達成するためにあると位置付けている。
白書の中でも「究極の目標は、クルマを自動化させることではなく、自動化を人々により広めることで安全、便利かつ楽しい移動を、誰もが享受できる社会を作り出すこと」といっている。たしかに、自動化を広めることで、逆に事故を誘発してしまうのでは本末転倒である。自動運転を商品化することだけに躍起になるのではなく、それが社会に与える影響まで見極めようとしている。ここに、トヨタが自動運転を積極的に標ぼうしない所以がある。
白書の自動運転車開発に対するアプローチにおいても、SAEの自動運転分類法とは別に、オートメーテッド(automated)とオートノマス(autonomous)の定義を設け厳密に考えようとしている。オートノマスは「自動化されたシステムが常に運転操作を行う車両」とトヨタは定義しているが、他社ではオートノマス(自律)していない車についてもすでに「オートノマス・ヴィークル」と表現してしまっている。これにトヨタは注意を払っている。あやふやな表現は消費者に誤解を与え、間違った使用を招きかねないからだ。
テスラの事故では、その一端を見ているような気がする。オートノマス機能が完全ではないのに、人間が運転を放棄したために起きた事故といえる。トヨタは「不完全な機能と不完全な理解」で起きる、このような事故を懸念しているのだろう。
余談だが、オリエンタルランド(ディズニーランド)が運営するのに4つの行動基準を設けているのを思い出す。Safety(安全)、Courtesy(礼儀正しさ)、Show(ショー)、Efficiency(効率)。これは優先順位も表している。やはり「効率」より「安全」が第一なのだ。
■ディーラーへのビジョンの浸透
このような高い目標を掲げているトヨタ本社だが、実際にディーラーに車を買いに行くと、その主義主張は浸透していないと感じる。「コーポレート・ガバナンス」の問題だ。メーカだけでなくディーラーにまでガバナンスを浸透させるには、「カイゼン」の概念が欠かせない。現在のディーラーには「カイゼン」の概念は浸透していない。またお客様窓口の「トラブル対応」はメーカーの「欠陥車」対応を遅らせている懸念がある。この白書の趣旨を営業の現場にまで浸透させる努力が、社会のAIによる混乱を少なくまとめられるかのカギであろう。
白書の中で、トヨタの自動運転技術の開発理念には、「人とクルマが同じ目的で、ある時は見守り、ある時は助け合う、気持ちが通った仲間(パートナー)のような関係(MTC)」とある。量販車であれ、レクサスであれ、消費者はそのパートナーを探しにディーラーに行くのである。そんな大事な買い物に、どんな見守り機能があり、助け合い機能があるのかを親身にアドバイスせず、ただその場だけの一本釣り商法で強引に誘導する営業マンでは車好きは生まれない。
トヨタ一流のカイゼン魂をもっとディーラーにも浸透させるには、企業側が社員自身に対して、車好きにさせる努力をすることだ。そうすれば、「もっといいクルマをつくろうよ」とのキャッチフレーズも世間が理解できるようになるだろう。さらに、発展途上にあるAIによる混乱を招くことなく、技術改革が進められるはずだ。今回のトヨタの「自動運転白書」の公表は、そんな願いが込められたものだ。
この白書が「お題目」に終わらないためには、ディーラーに対するガバナンスの浸透をトヨタに要望したい。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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