【投資の真髄:トヨタ生産方式(5)】コマツ製作所方式との差

2017年9月2日 11:44

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 三菱自動車のハブ・ドラム工場で学んだ折「高価なNC(コンピュータ制御)旋盤はいらない」と教わったのだが、その後、コマツ製作所との取引で新たな知識が結論を変えていくことになった。当時コマツ製作所も私の会社との取引に興味を示し、生産技術課長を派遣して、我社のレベルを査定することとなったのだった。

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■生産数量による対策

 まず三菱自動車の大型トラックとは言え、建設・産業機械の生産量とは2ケタの差があり、考え方を変えねばならなかった。「工程を結合させる」ことについては自動車産業と同じに考えるべきで、古い機械でも組み合わせて一人の作業員が出来ることを増やす必要があった。「トランスファーマシン」の考え方だ。

 しかし、建設・産業車両では生産数量が少なく、段取り替えが頻発する。そのため加工が特定の製品に限られていると、多種少量生産に対応することが出来ないため、段取り替えの容易なNC(コンピュータ制御)工作機械が有効であると言うことだった。「フレキシブル・トランスファーマシン」の考え方だ。

 専用機では段取り替えは時間がかかるものだったが、NC工作機械ではプログラムを入れ替えるだけで大部分が済んでしまうことで、短期間に済ませることが出来た。また当然に専用機に対して加工時間は長くなっても、多種類製品の多工程に対応できることで、工程結合が進み、中間在庫をなくすことが出来るのだ。そうして多種類の製品を同じ製品の加工として対応できるようにしていくことが、現在のTNGAの考え方の方向性である。

 コマツの我社に対する査定は散々なものだった。生産技術は最低ランクで「これでも治具を使っているのか」とお叱りを受ける始末であった。「面白い。コマツに見学に来い」と「コマツの進んだ生産技術を見せてやる」とばかりに招待された。営業としては成功でも、本心はがっかりである。

 コマツの社内で、ほとんど同じようなハブを、我社と同じメーカー型番の旋盤などの工作機械を使って生産していた。これは驚きだった。何が違うのかと言えば「材料ローディング機械」を自社開発していたことだ。「人の手間(作業)を掛けることがコストだ」とコマツ製作所の当時の課長が示していた。

 現在の値段で1億円ほどの材料ローディング機械を開発していた。そこで私が気付いたのは、1・2工程を分けて生産していたことだった。中間仕掛在庫は、やはり別途置き場所を確保して管理していた。「これは勝った」と私は思った。考え方は「在庫を最小限にする」にはなっていなかったのだ。コマツは当時は「トヨタの看板方式」(多種少量生産)ではなく依然として「ロット生産」であったのだ。

 むろん現在では、コマツは最先端の考え方を取っており、一人の作業員は40車種以上の組み立てが出来ると言っており、多種少量生産になっている。それだけではなくIoTに世界でも、いち早く対応してきており、進歩し続けている。

【投資の真髄:トヨタ生産方式(6)】世界最先端IoTまで見越したコマツの工程結合 につづく(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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