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「会社での経費精算」の話と、仕事とプライベートを切り分ける難しさの話
会社勤めの人であれば、ほぼ全員が何かしらの「経費精算」をしたことがあると思います。ここで言う「経費精算」とは、業務上として会社に認められた経費を個人が立て替えたときのことです。
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通勤経路とは異なる業務上移動の交通費、セミナー参加費、打ち合わせの会場費や飲食費、顧客との懇親会費や接待交際費、その他いろいろあります。
もちろん、無制限に何でも認められる訳ではなく、それなりに細かい支給基準が決められているでしょう。それでも切り分けがしにくいグレーゾーンのもの、どっちつかずのあいまいなものは必ずあると思います。そんなとき、これも良いこととは言えませんが、上司判断で認めてくれたり、自己判断で調整したりして、「常識の範囲」で適宜処理しているのではないかと思います。
特に懇親会や接待というのは、仕事のような仕事でないような、本当に必要性があるのかないのか、あいまいな部分が大きいものです。上司承認、一回の金額、予算額、一次会だけに限るなど、いろいろな基準があると思いますが、「仕事とプライベートの境目をはっきり決める」というような話なので、そう簡単に割り切れるものではありません。
中には自腹を切ったりする人もいますが、どちらかと言えば最近そういう人は少なく、会社で認められる範囲だけ、もしくは面倒だから一切やらないなど、行動を抑える方向に向くことがほとんどでしょう。
ここで、私たちのような自営業の場合は、このような形の「経費精算」というものは存在しません。経費かどうかという切り分けはしますが、あくまで税務処理上の話で「自分が立て替えた」とか「自腹を切った」というような感覚はあまりありません。自分が必要だと思うことにはお金をかけても動き、結果としてそれが経費として認められるかどうかということです。
そんなわけで、仕事かプライベートかの切り分けの難しさが行動の制約になることは、あまりありません。あくまで仕事に役に立つ可能性があるかどうかだけで判断しますから、結果としてはただ飲み食いしているだけ、ただ遊んでいるように見えるだけということも数多くあります。
しかし、そんな無駄とも思える関係の中から、仕事の話につながることも少なくありません。1か月後のことも10年後のこともありますが、話があるということはそれなりに意味があるということです。
これは仕事のやり方にかかわらず当てはまることですが、リーダー、マネージャー、ほか組織のまとめ役になっていくほど、今やっていることが果たして仕事なのか、それともプライベートなのかという切り分けの難しい場面が増えてきます。
このあたりの管理のしかたは会社によっていろいろあり、その基準は予算や規定や個人のモラルや誠意の場合もあります。切り分けるための基本的な考え方は必要でしょう。
ただ、ここで一つだけ言えるのは、「仕事とプライベートの切り分けを厳格にしようとすればするほど行動がしづらくなる」ということです。
最近の発表された日本生産性本部が新入社員に行った調査の中で、「職場の同僚、上司らとは勤務時間以外は付き合いたくない」との回答が過去最高の30・8%に上ったという結果がありました。仕事は仕事、プライベートはプライベートと、切り分けをはっきりしたいということだと思います。
最近は「仕事とプライベートの切り分け」を重視する人が増えているということで、その職業観の前提として、仕事は「誰かに強制されるもの」「嫌でもやらなければいけないもの」「生活するために仕方がないもの」という意識があります。
しかし、「仕事は楽しいもの」「やりたいことや好きなことと合致したもの」「結果を求めてやり続けたいもの」であったとすれば、「仕事とプライベートの切り分け」ということは意味をなさなくなります。
ちなみに私たちのような自営業にとって、仕事につながる機会が少なくなるというのは、絶対に避けたいことで、「仕事とプライベートを切り分けること」がその制約につながるとしたら、それは仕事をする上ではマイナスということになります。行動を制約するよりは、行動してからそのつじつまを合わせようと考える方が、よほど重要です。
ただ、会社の経費精算という仕組みは、どちらかと言えば行動をしないことにインセンティブが働きます。日本の企業では一般的で当たり前なことですが、大事なことをやらない、やらずに済ますという方向に導いている可能性があります。
経費精算の仕組みを厳格に運用していると、本来するべき行動をやめている可能性を考えなければなりません。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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