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セルシードは食道がん再生治療の細胞シート再生医療製品の19年承認取得目指す
セルシード<7776>(JQ)は細胞シート再生医療製品の開発、事業化、世界普及を目指すバイオベンチャーである。19年に食道がん再生治療の食道再生上皮シートの製造販売承認取得を目指している。株価は安値圏だが、第16回新株予約権の行使も進展し、基調転換して底放れの展開が期待される。
■細胞シート再生医療製品の事業化、世界普及を目指すバイオベンチャー
細胞シート工学を基盤技術として、再生医療製品および再生医療支援製品を研究開発し、細胞シート再生医療の世界普及を目指すバイオベンチャーである。01年5月設立で、10年3月JASDAQ NEO(現JASDAQグロース)に新規上場した。
温度応答性ポリマーを用いた細胞シート工学という日本発の革新的再生医療技術を基盤として、この技術に基づいて作製される細胞シート再生医療製品の開発・事業化を目指している。さらに、これまで治療が難しかった疾患や障害を治癒する治療法として、細胞シート再生医療の世界普及を目指している。
なお日本では14年11月施行の「医薬品医療機器等法」および「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」によって、遺伝子治療を含む再生医療等製品に対する早期承認制度が導入されている。
■細胞シート再生医療とは
細胞シートは患者自身の組織から採取した細胞をシート状に培養したものである。そして細胞シート工学は、生体組織・臓器の基本単位となる細胞シートを生体外で人工的に作製する再生医療基盤技術で、東京女子医科大学先端生命医科学研究所の岡野光夫氏が世界で初めて創唱した。
温度応答性ポリマーで表面加工した細胞培養皿を用いて、患者自身の組織から採取した細胞をシート状に培養する。温度応答性ポリマーは37℃付近以上で疎水性に、それ以下の温度で親水性となる特性があるため、37℃で培養し、培養後に温度を室温程度(20℃~25℃)に変えるだけで、細胞外マトリックスを保持したまま有機的に結合した細胞シートを培養皿から回収できる。
細胞シート作製に必要な培養期間は、細胞の種類などによって異なるが概ね1~2週間程度で、細胞シートのサイズも自由に設定できる。複数の細胞シートを積層させて、細胞シート同士を接着させることもできる。
培養した細胞シートを患部に貼る(移植する)だけで、細胞が生着(移植した細胞が患部に定着)し、細胞シートから分泌されたサイトカイン(細胞から放出されて細胞増殖や分化に影響する特定のたんぱく質の総称)が、患部の弱った細胞を活性化させると考えられている。
また細胞シート再生医療には、患者自身の細胞を用いるため免疫拒絶反応が起こらない、身体のどの部位の細胞からも作製できる、施術としては比較的簡単な治療法である、細胞が生体組織に速やかに生着する、残存機能を損なわずに根治を目指すことも可能である、などのメリットがある。
細胞シート再生医療は既に、さまざまな組織の再生に関する臨床研究が実施され、ヒト患者治療における基本的な安全性・有効性を示唆する科学的エビデンスが示されている。これまで治療が難しかった病気の症状改善、機能回復、治癒が期待され、新たな再生医療技術として注目されている。
■細胞シート再生医療事業および再生医療支援事業を展開
事業区分は細胞シート再生医療事業および再生医療支援事業としている。細胞シート再生医療事業は、細胞シート再生医療製品および応用製品の研究開発・製造・販売を通じて細胞シート再生医療の普及を推進する。再生医療支援事業は、細胞シート再生医療の基盤ツールである温度応答性細胞培養器材および応用製品の研究開発・製造・販売を通じて再生医療の研究開発を支援する。
なお子会社のCellSeed Sweden AB(スウェーデン)は、欧州で細胞シート再生医療製品の研究開発を行っている。
■食道再生上皮シートと軟骨再生シートの承認取得・事業化目指す
細胞シート再生医療事業では、優先的に自社開発を推進するパイプラインとして、食道再生上皮シートおよび軟骨再生シートを設定し、当社における細胞シート再生医療第1号製品としての早期承認取得・事業化を目指して研究開発を推進している。
なお事業化・収益化に向けた基本方針は、まず国内での細胞シート再生医療パイプラインの開発を自社主体で推進し、製造販売承認取得を目指すとしている。そして細胞シート再生医療の世界普及を推進するため、製造・販売のサプライチェーン体制を構築して事業化を前進させつつ、海外展開は他社との提携も視野に入れて細胞シート再生医療事業の拡大を目指す方針だ。
■食道再生上皮シートは19年承認取得目指す
食道再生上皮シートは、食道がん再生治療法(食道創傷治癒・狭窄予防)として、東京女子医科大学先端生命医科学研究所が開発した治療法である。患者の口腔粘膜から採取した細胞を、温度応答性細胞培養皿を用いて細胞シートを作製し、食道がん切除内視鏡手術後の食道潰瘍面に移植する。
東京女子医科大学と食道再生上皮細胞シート開発基本合意書を締結し、16年8月から国立がん研究センター中央病院、国立がん研究センター東病院、東京女子医科大学病院において治験を開始した。そして17年2月には厚生労働省から再生医療等製品の先駆け審査指定制度の対象品目指定を受けた。
今後の計画として、日本で17年は治験進行、18年に製造販売承認申請、そして19年に製造販売承認取得および販売開始を目指している。欧州では子会社のCellSeed Sweden AB(スウェーデン)が、16年に欧州医薬品庁(EMA)と事前相談し、治験準備中である。
なお食道再生上皮シート移植用デバイスも同時開発している。細胞シートと組み合わせて治験を実施し、欧州での治験でも使用できるように医療機器としての承認を取得する方針だ。
■軟骨再生シートは17年第4四半期に治験開始予定
軟骨再生シートは東海大学と、軟骨欠損および変形性膝関節症を適応症として共同研究を進めている。細胞シートを積層化した3次元複合体の積層化軟骨細胞シートを患部に移植し、軟骨の修復・再生に寄与する。17年2月には東海大学整形学科の佐藤正人教授が、世界初の同種軟骨細胞シートの移植手術(多指症患者軟骨組織を採取し、同種細胞シートとして移植)を実施した。
そして17年2月東海大学と、軟骨再生シート臨床研究の実用化開発、治験、製造販売承認申請に向けて協力体制を推進することを目的とした基本合意書を締結し、開発を加速している。今後の計画は、17年第4四半期(10月~12月)頃に治験開始、18年~19年は治験進行としている。
なお6月19日には、日本医療研究開発機構(AMED)が公募した平成29年度「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業(再生医療等の産業化に向けた評価手法等の開発)」に、当社を代表機関として、東海大学およびDNAチップ研究所<2397>を分担機関とする研究開発項目が採択を受けたと発表している。事業課題名は「同種軟骨細胞シートのための有効性品質評価手法の開発」である。
■海外は台湾で事業提携
海外展開は、17年3月台湾MetaTech社と、細胞シート再生医療事業(食道再生上皮シートおよび軟骨再生シート)の台湾での事業提携契約を締結し、独占的開発・製造・販売権を付与した。開発進捗に応じてマイルストーン収入、開発製造関連データ料、開発サポート料を最大12億5000万円程度受領予定である。また上市(販売)時には売上高に応じたロイヤルティ収入を得る。
■次期品目の開発に着手
細胞シート製造を安定的かつ迅速に推進することを目的として、16年細胞培養施設(CPC=Cell Processing Center)を設置し、17年3月厚生労働省から特定細胞加工物製造許可を取得した。
今後の戦略としては、パイプライン充実に向けて、食道再生上皮シートおよび軟骨再生シートに続く次期品目の開発に着手する方針だ。また細胞シート再生医療事業の海外展開につながる事業提携案件にも積極的に取り組む方針だ。
■再生医療支援事業ではテルモに特別仕様製品を供給
再生医療支援事業は、主要顧客である大学・研究機関向けなどに、細胞シート回収用温度応答性細胞培養器材UpCellを中心とした器材を開発・販売している。
14年4月大日本印刷<7912>と細胞培養器材製造委託基本契約を締結し、市販製品(研究開発用途に限定)について大日本印刷に製造を委託している。また16年3月にはテルモ<4543>と細胞培養器材に関する取引基本契約を締結した。テルモが再生医療等製品に係る保険適用決定を受けた「ハートシート」に含まれる当社製品(温度応答性細胞培養器材)について、市販製品とは異なる特別仕様製品を供給する。
今後の戦略としては、研究用器材の新製品開発や臨床応用用途の製品開発など顧客ニーズに対応した製品ラインナップ拡充、新規販売代理店開拓などによる国内外の販売網強化、さらに製造コストの引き下げなどを推進する方針だ。
■20年12月期以降の収益化期待
中期経営計画による損益目標数値は、17年12月期売上高1億円、純利益12億30百万円の赤字、18年12月期売上高2億50百万円、純利益9億30百万円の赤字、19年12月期売上高3億50百万円、純利益8億80百万円の赤字としている。
細胞シート再生医療第1号製品となる見込みの食道再生上皮シートは、17年治験進行、18年製造販売承認申請、19年製造販売承認取得を目指しているため、19年12月期までは赤字が継続する見込みだ。なお台湾MetaTech社との台湾事業提携による収入(最大12億50百万円程度)など、事業提携関連の売上は織り込んでいない。食道再生上皮シートの販売が本格化する20年12月期以降の収益化が期待される。
■株価は基調転換して底放れ期待
なお17年3月発行したEvolution Biotech Fundを割当先とする第16回新株予約権(行使価額修正条項付/コミット・イシュー、当初行使価額510円、総数220万個=220万株)について、6月21日付リリース「大量行使に関するお知らせ」によると、6月21日時点における未行使個数は110万個(110万株)となった。
株価の動きを見ると、安値圏520円~530円近辺でモミ合う形だが、6月20日には動意づいて606円まで急伸する場面があった。そして底放れの動きを強めている。6月29日の終値は537円で、時価総額は約53億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線を突破した。第16回新株予約権の行使も進展し、基調転換して底放れの展開が期待される。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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