山本裕典契約解除から見えてきた「若手イケメン俳優」の苦しさ

2017年3月28日 15:25

印刷

 俳優、山本裕典が所属していたエヴァーグリーンエンタテイメントを解雇になったのが今月の21日。報道以来、その原因について、様々な不確定な憶測が飛び交っていたが、27日に放送されたフジテレビ『バイキング』において、所属事務所の弁護士が出演し、(できる範囲で)説明をした。

 噂されたバー経営などの副業は問題にはなっておらず、解雇の原因になったのは『仕事に対する努力が足りない』という部分だったという。番組内では、MCの坂上忍らが、さらに説明を求めていたが、その部分の具体的な話は出なかった。ただし、女性問題などは否定もしなかったため、おそらくは奔放すぎる私生活が問題視されたであろうことは間違いない。気になったのは「プライベートで何をしようと自由だし、独身なんだから女性と付き合うのも構わない。ただ、それを報道されてしまうと、ドラマやCMに影響が出てしまう」という趣旨の発言だ。

 どこかで聞く話だと思ったら、清純派のアイドルに対して、ファンがよく言うセリフと同じなのだ。狭義に解釈すれば、山本は俳優業だけでなく、舞台の演出も手掛けるなど、『仕事に対する努力』は、ファン以外にも認められていた。若さに任せた勢いのある役から、徐々に年齢にあった落ち着いた役もできるようになり、演技の幅は確実に広げていたといえる。

 だが、スキャンダルが表に出れば、当然CMは減り、ドラマや映画でも、共演をNGにする女優(事務所)も出てくるだろう。俳優の仕事は、演技がよければいいわけではないということになる。現在の大御所たちが、懐かし気に語る若い頃の武勇伝などは、現在の若手俳優にとっては絶対に許されないことなのだろう。

 しかしながら、30歳の男が清純派アイドルのような、プライベートのストイックさを求められ、視聴者の模範となることを求められているというのは、なんとも違和感がある。挫折や失敗を含めて、様々な経験をしてこそ、役者として味が出るということは、多くの名優たちが証明しているのだから……と思ったが、そこまで気を使わなければいけない理由があるのだ。

 それは、山本と同世代の「若手イケメン俳優」は、大渋滞を起こしているということ。この世代は、「花盛りの君たちへ~イケメンパラダイス」「ごくせん」「GTO」など、学園ドラマで注目され、その後ゴールデンの主演を務めた俳優が何人もいるのだが、その後役者として順調に成功しているのは、ジャニーズ系ぐらいで、ほとんどいない。水嶋ヒロ、五十嵐隼士のように引退したものもいるし、高岡蒼佑や速水もこみちも役者としてドラマで見ることは少ない。

 恋愛ドラマが消え、恋愛映画では10代の有望な若手が世代交代の牙を剥き、かと思えば、恋愛対象として40代、50代の俳優を好む女性が増えてしまった結果、30代前後のイケメン俳優は、少ない枠を必死で取りにいかなければいけなくなってしまったのである。

 とはいえ、品行方正なイケメン俳優と、品行方正なアイドル女優ばかりになってしまうっていうのも、少々不安だったりする。果たして、この世代の巻き返しはあるのか?今後を注目して見守っていきたい。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事