米連邦地裁、フィクション登場の店名は商標登録なくても保護対象に

2017年1月16日 08:45

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記事提供元:スラド

米国・テキサス州の連邦地裁は11日、フィクションに登場する店の名前に関し、商標登録をしていなくても商標保護の対象になることを認める略式判決を下した(裁判所文書: PDFConsumeristの記事)。

この裁判は2014年にテキサス州のIJR Capital Investmentsがレストランの名称として「The Krusty Krab」の商標を出願したことに始まる。しかし、この名称がニコロデオンのアニメ「SpongeBob SquarePants(邦題: スポンジ・ボブ)」に登場するレストランの名前と同じだったことから、ニコロデオンの親会社バイアコムがIJRによる商標権侵害を主張、店名の変更やレストランでスポンジ・ボブの商標を一切使用しないこと、商標の出願を取り下げることを要求したが、IJRが拒否したため提訴していた。

アニメのThe Krusty Krab (邦: カニカーニ)は、海の底にある架空の町 Bikini Bottom (邦: ビキニタウン)でカニのMr. Krabs (邦: カーニさん)が経営するハンバーガーレストラン。主人公のスポンジ・ボブはこの店で働いており、1999年から放送されたテレビシリーズでは203エピソード中166エピソードに登場しているほか、映画やWebサイト、モバイルアプリ、グッズでも繰り返し使われている。

IJR側はバイアコムがThe Krusty Krabの商標を登録していない点に加え、架空のレストランに対する商標は認められないと主張していたが、連邦地裁のGray H. Miller判事は商標権が登録により発生するものではなく、使用により発生するものであると指摘。「スーパーマン」の「クリプトナイト」や「デイリー・プラネット」の商標権が認められた判例を引き、架空のレストラン「The Krusty Krab」の商標が有効であると判断している。
また、名称で「C」ではなく「K」を使用している点など、IJRの出願した商標はスペルも発音もスポンジ・ボブのレストランと全く同じであり、IJRのレストランがバイアコム公認であると誤認させる可能性が高い点や、IJR側が商標出願前にスポンジ・ボブのレストランを知っていた証拠がある点などを指摘し、混同のおそれがある点でも商標保護の要件を満たすと述べている。

なお、訴状(PDF)でバイアコムは商標の希釈化や偽装表示、不当競争行為なども指摘しており、IJRの商標登録を拒否するよう米特許商標庁(USPTO)に命じることも求めているが、これらの点に関しては略式判決の請求に含まれないので除外されている。

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