月の誕生に関する新学説が登場 月は隕石の連続衝突で生まれた?

2017年1月13日 11:54

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月の直径は地球の4分の1程度、質量は80分の1程度である。(写真:Dwayne Madden/flickr)

月の直径は地球の4分の1程度、質量は80分の1程度である。(写真:Dwayne Madden/flickr)[写真拡大]

 月の誕生は、「原始の地球に、隕石が複数回連続衝突したことによるものである」という新説が発表された。これが事実なら、これまで信じられてきた定説が覆ることになる。

 地球には一つの衛星がある。月である。このことは当たり前のようで、実は当たり前ではない。衛星を持たない惑星など珍しくもないからだ。なぜ、地球には月があるのだろう?月は、いつ、どうやって生まれたのだろう?古来より、この問題は、多くの人の頭を悩ませてきた。

 無数の理論が提唱されてきたが、古典的理論として有名なものが三つある。親子説、兄弟説、他人説である。一つずつ見ていこう。

 まず親子説。これは、「地球が分裂して月が生まれた」という説である。太陽からの潮汐力が地球を二つに引き裂き、小さい方が月になった、というものなのだが、それほど巨大な潮汐力が太陽から働くということは考えにくく、現在ではほぼ否定されている。

 次に兄弟説。地球が生まれたとき、月もその近くでほぼ同時に生まれたのだ、という説である。ただし、地球と月の組成の差などの分析から、こちらも今日では支持する人は少ない。

 三つ目に他人説。捕獲説ともいう。太陽系外の小天体であった月が、たまたま地球の近くを通った際にその重力に捉えられ、衛星として周囲を回るようになった、という説である。なかなかロマンがあり、天文学上の定説になっていたこともあるのだが、「地球と月の成分が酷似している」という実測データから、やはり今は支持されていない。

 現時点で最も有力な仮説は、ジャイアント・インパクト説という。原初の地球に、火星ほどのサイズの天体が飛来・衝突して双方が爆散、その塵が二つの塊にまとまって、現在の地球と月ができた、というものだ。

 だがこの仮説にも弱点がある。どこかから飛んできた天体と原初地球が衝突したなら、その双方の遺物が異なった濃度で地球と月の素となったはずだが、それにしては月と地球の組成は、やはり似すぎているというのだ。

 さて。今回の新しい説は、ラルカ・ルフという人物により提唱され、英国の科学誌『Nature Geoscience』に掲載された。それによると、地球に衝突した天体、隕石は、一つではなかった。まず最初の隕石が地球に激突し、飛び散った塵が、宇宙に漂った。二つ目の隕石による塵が、さらにその密度を高めた。

 このような過程を20回ほども繰り返し、塵はやがて一つの塊となった。これが月である、とルフ氏は言う。この仮説の通りのことが起こったとすると、月と地球の組成がよく似ていることの説明が矛盾なくつけられるらしい。

 この新説の真偽のほどまでは、筆者には何とも言いかねる。世界の天文学者らによる、今後のさらなる検証が必要であろう。しかし、面白い学説が出てきたものではある。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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