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「流れ」のパターンの複雑な画像を文字列化する手法を開発―流れの解析が容易に=京大・坂上貴之氏ら
流れの極大語表現と正規表現の例: (左)数値シミュレーション結果(中央)シミュレーションから抽出された流れパターン (右)パターンの極大語表現(上)と正規表現(下)(京都大学の発表資料より)[写真拡大]
京都大学の坂上貴之教授と横山知郎准教授は、平面における非圧縮流れの全パターンを、数学(幾何学)の一分野であるトポロジーを用いて完全に分類し、各パターンに固有の文字列表現(極大語表現・正規表現)を割り当てる手法を開発した。この文字列表現を利用することで、流れのパターンの複雑な画像情報を、コンピュータ上で扱いやすい文字列情報に変換できるという。
今回の研究では、「流れ」のパターンの画像情報を、幾何学の一分野である「トポロジー」 により完全に分類し、それに対して固有の文字列を与える手法を開発した。具体的には、二次元空間の非圧縮流れ全体の集合の中から、小さな乱れやノイズを加えてもその流れのパターンが変化しないようなものを考え、それに対して固有の言語の文字列(極大語表現と正規表現)を与えるアルゴリズムを開発した。
この手法によって流れ画像のデータを文字列化することによって、流れ画像のデータ解析に以下のような利点がもたらされるという。
・流れのパターン画像に比べてデータを1/1000~1/10000と大幅に圧縮できる
・データがコンピュータで扱いやすくなり、解析を高速化・効率化できる
・この文字列を共通言語として使うことで、流れについての知見をそれぞれの専門を越えて利用できる
・各分野の専門家が培ってきた流れの画像診断・画像解析の経験知を適切に抽出・言語化し、他分野の専門家や一般人でも利用しやすくなる
・これまでは経験と勘に基づいて行われてきた流れの最適化問題を、数学的な確度をもってその設計方針を決定でき、「流れ最適化」の効率を向上できる。
今回の研究成果は多方面への応用が考えられるが、例えば、天気予報に活用された場合、流れと天気の関係を文字列で表現し、「西高東低」といったこれまでの表現に換わる、詳細をより正確に表現する気象用語が生まれる可能性があるという。
研究メンバーは、「この語表現の理論は三次元の流れにはできないなどまだ改良の余地はありますが、二次元の流れであれば数学的な正確さと厳密さを背景にしてかなり正確に流れの状況を伝えられると考えています」とコメントしている。
なお、この内容は「Proceedings of Royal Society A」「Physica D」に掲載された。論文タイトルは、「Transitions between streamline topologies of structurally stable Hamiltonian flows in multiply connected domains」。
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