粒子と反粒子が同じである「マヨラナ粒子」の存在を理論的に確認―NIMS川上拓人氏ら

2015年11月4日 23:04

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トポロジカル超伝導体の量子渦に局在するマヨラナ粒子の模式図と理論計算による超伝導準粒子励起密度分布。(物質・材料研究機構の発表資料より)

トポロジカル超伝導体の量子渦に局在するマヨラナ粒子の模式図と理論計算による超伝導準粒子励起密度分布。(物質・材料研究機構の発表資料より)[写真拡大]

 物質・材料研究機構(NIMS)の川上拓人特別研究員・古月暁主任研究者のグループは、今年1月に中国の研究グループによって報告された「特殊な超伝導状態に関する実験結果」がマヨラナ粒子と呼ばれる粒子の存在証拠になっていることを理論的に示した。

 粒子と反対の電荷を持つ粒子は、反粒子と呼ばれており、その存在も実証されている。例えば、電子の反粒子として陽電子が存在する。E.マヨラナは、電荷が中性で反粒子も自身に等しい粒子(マヨラナ粒子)の存在を提案したが、こちらは提唱から80年近く経った今でも存在が確認されていない。

 一方、今年になって上海交通大学の実験グループが、従来型のs波超伝導体基盤の上に3次元トポロジカル絶縁体薄膜を成長させ、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて、超伝導量子渦の中心部で大きなゼロエネルギー準粒子励起密度を観測している。

 本研究では、従来型s波超伝導体とトポロジカル絶縁体のヘテロ構造について、Bogoliubov-de Gennes方程式を解くことによって、準粒子励起を解析した。その結果、トポロジカル絶縁体薄膜が厚い場合は、マヨラナ粒子が薄膜の上下の表面に局在していること、トポロジカル絶縁体薄膜が薄ければ、超伝導量子渦全体に伝導電子状態が現れてマヨラナ粒子が掻き消されることを示した。

 さらに、量子渦の中心から計った距離とエネルギーの関数として準粒子励起密度を評価し、実験的に観測されたパターンと一致することを確認した。つまり、上海交通大学の実験結果は、マヨラナ粒子が存在していることを示していると言える。

 今後は、マヨラナ粒子を高い精度で確認することによって、物質・材料の科学と技術の新展開に波及効果をもたらすことが期待される。今回の研究内容は、Physical Review Lettersに掲載された。論文タイトルは、「Evolution of Density of States and a Spin-Resolved Checkerboard-Type Pattern Associated with the Majorana Bound State」。

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