日立ら、電力損失を60%低減する環境対応自動車向けインバーターを開発

2015年9月28日 21:21

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開発したインバータ/両面冷却型フルSiCモジュール/チップ並列接続構造(日立製作所の発表資料より)

開発したインバータ/両面冷却型フルSiCモジュール/チップ並列接続構造(日立製作所の発表資料より)[写真拡大]

 日立製作所と日立オートモティブシステムズは28日、環境対応自動車向けの高効率・高出力なインバーターを開発したと発表した。

 同社によると、今回開発したインバーターは、低損失化が可能なSiCパワー半導体(SiC-MOSFET)を複数並列実装したパワーモジュールと高速スイッチングが可能な配線実装構造を適用することで、日立従来比で電力損失を60%削減し、同体積での電力容量を約2倍に拡大した。

 並列に接続されたパワー半導体では、周辺の配線が持つ電気特性の違いでスイッチングのタイミングがずれると早くオンした半導体や遅くオフする半導体に電流が集中する。電流が集中する半導体はデバイスの信頼性を保つために電流を制限する必要があり、その結果電力容量を大きくすることができなかった。

 そこで、今回、各半導体のオンオフのタイミングを等しくするため、先に開発した並列実装技術を応用し、各半導体への制御信号線の長さを均一化する配線基板を開発し各配線の抵抗特性を揃えることに成功した。これにより、SiC半導体の低抵抗な特性を十分に引き出すことができた。

 また、インバーターにおける電力損失の低減には、パワー半導体のオンオフを素早く切り替えることが必要。このためには、スイッチング時に配線へ蓄えられる磁場エネルギーを低減することで負荷電流と電圧をスムーズに切り替え半導体で生じる損失を低減することが課題だった。開発したインバーターでは、負荷電流の向きが互いに逆になるように配線を重ね、両面冷却型パワーモジュールの缶状の金属製冷却フィンの中に実装する構造とした。これにより、冷却フィンは内蔵した配線が作り出す磁場を打ち消すことで配線に蓄えられた磁場エネルギーを低減した。

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