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再生腎臓の尿排泄路を構築することに成功―慈恵医大・横尾隆教授ら
東京慈恵会医科大学の横尾隆教授らの研究グループは、ラットとクローンブタ体内で再生腎臓の尿排泄路を構築することに成功した。(東京慈恵会医科大学などの発表資料より)[写真拡大]
東京慈恵会医科大学の横尾隆教授らの研究グループは、ラットとクローンブタの体内で再生腎臓の尿排泄路を構築することに成功した。
腎移植や透析療法が必要な末期腎不全患者は世界中で増加傾向にある。一番の治療法は腎臓移植であるが、国内のドナー不足もあり、透析導入数が年間約3万8000例あるのに対して、腎移植症例は年間約1600例しかない。そのため、腎臓を再生する技術の実現が臨まれている。
今回の研究では、まずクローンブタ間での腎原器の移植を実施した。移植した腎原器は8週間で3cm程度にまで成長したものの、水腎症を呈していたため、再生腎臓の発育継続には、尿排泄路の構築が不可欠であることが分かった。
そこで、尿排泄路を構築する第一段階として、ラットの膀胱付腎原基(クロアカ)と後腎とのラット体内での発育の違いを比較検討したところ、クロアカ由来の再生腎臓の方が水腎症化が進行せず、糸球体や尿細管構造などの発育が良好となることが明らかになった。
この発育したクロアカの膀胱とレシピエント(移植を受ける側)動物の尿管をマイクロサージャリー技術を導入して吻合することで、再生腎臓が産生する尿がクロアカ膀胱を経由して、レシピエント尿管からレシピエント膀胱内に持続的に排泄することができることがラットを用いた実験で確認でき、クローンブタにも適応可能であることを示した。
今後は、ヒトと同じ霊長類であるマーモセットを用いて、同様に再生腎臓の尿排泄路の構築が可能かどうかを検証する予定となっている。
なお、この内容は「米国アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。論文タイトルは、「Urine excretion strategy for stem cell-generated embryonic kidneys」。
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