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阪大、突然変異マウスを高効率で誕生させることに成功
今回の研究手法の概要を示す図。通常では解析が困難な哺乳類の進化過程を直接的に捉えるため、変異率を上げた(Mutator)マウスを用いた長期間の継代実験に取り組んでいる。各系統には、世代経過とともに、自然選択を受けながら数多くの変異が蓄積されていく。(大阪大学の発表資料より)[写真拡大]
大阪大学の内村有邦特任助教らの研究グループは、通常とは異なる形質を持つマウスを高頻度で誕生させることに成功した。
遺伝情報に発生する突然変異は、私たち一人ひとりの個性の違いや様々な病気の原因になっており、長期に渡ってそれらの変異が蓄積されることは生物進化の原動力となる。一方、社会問題になっている晩婚化などは、生殖系列の変異率を上昇させることが知られているが、人類集団の生殖系列の変異率がどの程度まで上がると、将来の人類集団に重大な影響を及ぼすのか、ほとんど分かっていなかった。
今回の研究では、長期間継代した野生型マウスの全ゲノム配列をシーケンシングし、その解析に多くの工夫を加えた結果、極めて高精度に変異を検出することが可能となった。
そして、変異率を上げたマウス(Mutatorマウス)の継代により多くの突然変異を蓄積させていくと、形態異常、毛色異常、行動異常等の表現型異常を示す個体が数多く誕生し、その中には、水頭症や白内障等、ヒト疾患にも関連する異常を示す個体も数多く見つかった。
さらに、Mutatorマウスでは、継代数が進むにつれて、雌雄ともに平均の体重が減少する傾向にあることや、繁殖能力が大幅に低下することも明らかになった。これによって、Mutatorマウスでは次世代の子供を残すことが困難になり、多くの系統で断絶が生じた。野生型マウスでは、こうした繁殖能力の低下は認められなかったことから、Mutatorマウスの高い変異率は、後世代の個体の健康や繁殖能力に重大な悪影響を与えることが分かった。
これらの結果によって、生殖系列の高い変異率が人類集団全体の将来にとって、重大なリスクになりうることが、実験的に示された。
野生型マウスで自然発生する変異率が測定できたことことから、今後はサプリメントなどにも利用できる、抗変異原性物質(生殖系列での変異発生を抑制する物質)の開発が可能になると考えられるという。また、今回の研究で新たに作出された疾患モデルマウスは、ヒトの病態に近い疾患モデルになると考えられ、ゲノム医療のための研究開発の基盤となる新しい実験動物モデルになることが期待される。
なお、この内容は「Genome Research」に掲載された。論文タイトルは、「Germline mutation rates and the long-term phenotypic effects of mutation accumulation in wild-type laboratory mice and mutator mice」。
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