東大、気管支喘息の治療に繋がる新しい生体メカニズムを明らかに

2015年8月3日 21:39

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左:マスト細胞は、アレルゲンに結合したIgE抗体の刺激によって脱顆粒をし、ヒスタミンなどの物質を放出して、様々な免疫細胞を活性化し、炎症を起こすことで喘息などのアレルギー疾患を悪化させる。右:マスト細胞は、IL-33の刺激によってIL-2を産生する。IL-2は免疫応答を抑制する制御性T細胞を増やし、この制御性T細胞が喘息などのアレルギー疾患を抑制する。(東京大学の発表資料より)

左:マスト細胞は、アレルゲンに結合したIgE抗体の刺激によって脱顆粒をし、ヒスタミンなどの物質を放出して、様々な免疫細胞を活性化し、炎症を起こすことで喘息などのアレルギー疾患を悪化させる。右:マスト細胞は、IL-33の刺激によってIL-2を産生する。IL-2は免疫応答を抑制する制御性T細胞を増やし、この制御性T細胞が喘息などのアレルギー疾患を抑制する。(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の中江進准教授らは、気管支喘息を抑える新しい免疫応答機構を発見した。

 現在、気管支喘息によって年間25万人もの患者が死亡している。薬剤吸入によって気管支喘息を一時的に抑えることはできるものの、完治はできないため、長期間薬剤の継続投与が必要となっている。

 今回の研究では、マウスにタンパク質分解酵素を吸入させると、肺胞上皮細胞からIL-33が放出され、このIL-33が免疫細胞である自然リンパ球や好塩基球を活性化することにより、気管支喘息に似た気道炎症を誘発することを明らかにした。

 また、マスト細胞が存在しないマウスでは、タンパク質分解酵素の投与による気道炎症は起こらないと予想されたが、それに反して、マスト細胞が存在しないマウスでは、タンパク質分解酵素の投与後、制御性T細胞が増えないため、気道炎症が重症化することを突き止めた。

 さらに、試験管内でマスト細胞とT細胞を混合し、そこにIL-33を加えることによって制御性T細胞だけを増やすことに成功し、マスト細胞を利用して体外で誘導した制御性T細胞をマウスに移植することにより、タンパク質分解酵素の投与による気道炎症が抑制できることを証明した。

 今後は、生体内のマスト細胞の機能のうち、制御性T細胞の誘導能のみを発揮させる方法を確立することにより、気管支喘息の新たな治療法の開発に結びつくと期待されている。

 なお、この内容は「Immunity」に掲載された。論文タイトルは、「An Interleukin-33-Mast Cell-Interleukin-2 Axis Suppresses Papain-Induced Allergic Inflammation by Promoting Regulatory T Cell Numbers」。

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