最高裁がプロダクト・バイ・プロセス・クレーム特許について初判断

2015年6月7日 17:32

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記事提供元:スラド

semialt 曰く、 製造方法によって発明の対象となる物を特定した、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレーム特許(PBPクレーム特許)について、その効力が請求項で開示されていない新規の方法で製造された同じ「物」にも及ぶとする初の判断を最高裁が示した。この裁判はPBPクレーム特許を持つハンガリーの製薬会社が、別の製造方法を利用する協和発酵キリン株式会社を訴えていたもの(NHKニュースの記事裁判例情報: 控訴審裁判例情報: 上告審)。

薬剤を「物の発明」として特許申請する場合は、化学式などでその構造又は特性を特定するのが通常であるが、特許の申請時にはその構造又は特性が明らかになっておらず、「○○して○○することでできる○○なプラバスタチンナトリウム」のように、薬剤を生産する方法を請求項(クレーム)に記載することで薬剤を特定して特許を取得することがある。これがPBPクレーム特許だ。PBPクレームで特定された「物」について、特定された製造方法とは別の方法で製造された場合、PBPクレーム特許の効力が及ぶのかは、議論が分かれていた。

 (続く...)

 本件で原審の知財高裁は

 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法の記載がある場合における当該発明の技術的範囲は,当該物をその構造又は特性により直接特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するときでない限り,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物に限定して確定される

 とし、特許の効力の範囲外と判断していた。

一方、最高裁では

 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定される

 と判示。PBP特許の効力が請求項で特定された方法以外で製造された物にも及ぶと判断して、事件を知財高裁に差し戻した。

最高裁ではPBPクレーム特許が認められる条件として「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られる」としているが、既に知財高裁ではそのような事情が認められないと判断している。一見、最高裁の判断は特許権者に有利な判断のようだが、知財高裁で改めて審理した結果、特許が無効とされる可能性もありそうだ。

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