九大、超高密度シリカが月や火星起源隕石に存在する理由を明らかに

2015年5月13日 16:10

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高圧下におけるシリカ鉱物の相関係を示す図。今回の研究ではザイフェルタイトの安定領域よりも非常に低い圧力下で準安定なザイフェルタイトの形成が観察された。この現象は月や火星起源の隕石に存在するザイフェルタイトの謎を解明する重要な手がかりとなった。(九州大学の発表資料より)

高圧下におけるシリカ鉱物の相関係を示す図。今回の研究ではザイフェルタイトの安定領域よりも非常に低い圧力下で準安定なザイフェルタイトの形成が観察された。この現象は月や火星起源の隕石に存在するザイフェルタイトの謎を解明する重要な手がかりとなった。(九州大学の発表資料より)[写真拡大]

 九州大学の久保友明准教授と加藤工教授らの共同研究グループで、シリカ(SiO2)の超高圧相であるザイフェルタイトが従来予想されていたよりも非常に低い圧力で形成されることを明らかにした。この知見は、月や火星起源の隕石中になぜザイフェルタイトが存在するのかという問題の解明につながるという。

 シリカは石英・水晶としてよく知られる地球表層に多く存在する身近な鉱物で、月や火星起源の隕石には超高圧環境でしか形成されないシリカ高圧相が発見されることもある。このような高圧相の存在は過去に月や火星で起こった隕石衝突の痕跡となる重要な情報で、その中でもザイフェルタイトと呼ばれるシリカの超高圧相は約100万気圧以上の超高圧力下で安定に存在する鉱物であり、月や火星起源の隕石がそれほどの高圧力が発生する大規模衝突によって形成されたとは考えられないため、大きな謎とされていた。

 今回の研究では、月や火星表層に存在するとされるクリストバライトというシリカ鉱物を用いて高圧実験を行った。大型放射光施設SPring-8のビームラインBL04B1で、高圧発生装置と強力なX線を用いて、クリストバライトが高圧相に変わっていく様子をX線回折法によって数十秒毎に観察したところ、これまで考えられていたよりも非常に低い圧力下(約10-30万気圧)で、ザイフェルタイトが出現することが分かった。

 こうした結果から、月や火星起源の隕石に存在するザイフェルタイトは、天体衝突という一瞬のイベントにおいて低圧下で準安定に形成され、安定相であるスティショバイトまで反応する時間がなかったという可能性が明らかになった。

 今後は、本研究のような反応速度論的な検討を行うことで、太陽系内における天体衝突史の解明につながることが期待される。

 なお、この内容は「Science Advances」に掲載された。論文タイトルは、「Curious kinetic behavior in silica polymorphs solves seifertite puzzle in shocked mete-orite」。

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