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誕生直後の地球には栄養豊富な地殻が存在していた―東大
地球マントル、珪長質地殻、隕石ジルコンのハフニウム同位体(176Hf/177Hf)進化の模式図。珪長質地殻はマントルに比べて低いLu/Hf比をもつために、ハフニウム同位体進化線の傾きが小さくなる。Bのグレーの領域は、様々な太陽系初期176Hf/177Hf同位体比が提案されていたことに起因する従来のマントルHf同位体進化の不確かさを示している(東京大学の発表資料より)[写真拡大]
東京大学の飯塚毅講師らの研究グループは、隕石に含まれるジルコン鉱物を用いて、太陽系の176Hf初期存在量を正確に決定し、さらに珪長質地殻が誕生直後(45億年前)の地球に存在していたことを明らかにした。
地球には珪長質な大陸地殻が存在するという特徴があり、この大陸地殻の形成には海洋の存在とプレートテクトニクスの稼働が重要な役割を果たしたと考えられている。珪長質な大陸地殻の形成年代を調べる方法の一つとして、176Luから176Hfへの放射性壊変(半減期357億年)に基づくHf同位体トレーサーがあり、これまでは、太陽系初期に形成された隕石の現在の176Lu/177Hf及び176Hf/177Hf同位体比を測定し、その比から逆算して太陽系形成時45.67億年前の176Hf/177Hf同位体比を推定していた。しかし、多くの隕石のLu-Hf同位体組成は変質の影響を受けているために、様々な太陽系初期176Hf/177Hf同位体比が提唱され、どの値が正しいのか決着がついていなかった。
今回の研究では、Agoult隕石から比較的粗粒(~80μm)なジルコンを発見し、高感度プラズマイオン源質量分析計を用いてHf同位体組成を高精度で決定することに成功した。その結果、太陽系形成時の176Hf/177Hf同位体比が明らかになり、45億年前には地球上に低いLu/Hf比をもつ(不適合元素に富む)珪長質な地殻が存在していたことが分かった。
今後は、この45億年前の珪長質地殻の形成過程をより詳細に解明することにより、当時の固体地球の構造、海洋の有無、さらには、初期生命進化について新たな知見が得られるものと期待されている。
なお、この内容は「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に掲載された。論文タイトルは、「Meteorite zircon constraints on the bulk Lu-Hf isotope composition and early differentiation of the Earth」。
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